鮫連載 初めまして、ご主人様02 「あら、スクアーロじゃない。帰ってたの?」 「さっき帰ったんだぁ」 談話室に行けば、そこにはティーカップを持ったルッスしかいなかった。 なんとなく釈然としないままソファに座れば、ルッスが紅茶を勧めてくるので、コーヒーを頼んだ。 見てくれや喋り方こそ気持ち悪いものの、ルッスの入れるコーヒーはなかなかなのだ。 「はい。」 「すまねぇ」 「いいえー、ふふ。」 「なぁ」 「なぁに?」 「名前見なかったかぁ?」 「…名前ってあの猫チャン?」 頷けば、今日は見てないわよ、なんて返事が返ってきた。 笑ってるのが癪に触る。 「今日はみんな任務のはずだから、誰も見てないんじゃないかしら。」 「そうかぁ、悪かったなぁ」 残っていたコーヒーを一気に飲み干して、談話室を出た。 ルッスは後ろでまだ笑っていた。 談話室にもいない。 部屋にもいない。 ならばどこにいるのか。 廊下を歩いているのか? こんな真夜中にあるはずがない。 ならばやはり部屋に居るのか。 このもやもやとしたものを解消するはずで部屋を出たのに、解消どころかさらに悶々とさせて帰ってくるはめになってしまった。 「ゔぉおい、名前居るのかぁ」 と言ってみるものの、何の反応もない。 苛つきと疲労が積み重なる中、最早探すだけ無駄かと思い寝室に入った瞬間、今までより明らかに規模のデカい雷鳴が鳴り響いた。 それと同時に、室内のクローゼットからガタン、と音がした。 . [*前へ][次へ#] |