泣いて暮らすも一生笑って暮らすも一生: prologue ただ、退屈だった。 否、刺激が欲しかった。 ……それも違うかもしれない。 ただ毎日の生活に楽しい事があれば、って思っていた。 今、唯一楽しいのは音楽だけ。 その音楽も他に楽しい事があると何か新しい物が加わると思ったんだ、俺は。 でも、変わらない日常が続いている。 きっとこのまま変わらない人生を歩むんだろうな。 ………退屈だ。 憂鬱な思いで世界史の授業を受けていた俺の携帯が何かを知らせる様に震えた。 光るランプの色を確認する。 青。――電話だ。 しかし、授業中なので出る訳にはいかない。 僕は偉い子だから。 なんつって。嘘とは言いきれねぇけど、嘘じゃないとも言いきれない。 授業が終わり着信した者を確認するが、名前では無く、番号が表示されていた。 つまり、友達やら知っている人ではない。知らない人からの電話だった。 そして、 「……留守電」 留守番電話を残したみたいだ。 その留守電を聞こうと携帯を右手から左手に持ち変えたところに数学の先生が教室に入って来た。 軽く舌打ちし、留守電は次の休みに聞く事にした。 ほら、さっきも言った通り俺、優等生だから。 正確には教室にいる間だけの、優等生。 先生の「じゃあ、今日は――」と言う声を聞き、ちょっと乱暴に携帯を机の中に投げこんだ。 ……使えねぇ奴(先公)。 下らなく、つまらない授業を終え、何故か再び電話がかかって来ており二つに増えた留守電を確認する為にサービスセンターに繋ぐ。 機械的な女性の声が聞こえて来てから数秒し、ガチャリと言う音と後に男の声が入っていた。 『みずもりー。是絃(スナオ)だけどーオメェ俺のノート返せ。わざわざ大学で使う奴を持ってくんじゃねェよ。 テメェは馬鹿だ。ぜってェ馬鹿だ。あー電話出ねェし。 …折り返し電話しやがれ』 ハスキーって言葉が凄く合う声。 …スナオ…名前かな? もう一つの名前っぽい(―みずもり―)の方は友達、なのかな。結構親しそうな口調。 大学で使うって事は大学生か、関係者。 この最初の留守電が14時10分。 機械的な女の人の声が2回目の留守電を入れたであろう時間を言う。 14時33分。 23分後。 『……あの、すんません。先程間違えて電話して、留守電残して。すいませんでした。最初の留守電……本当にすいません』 先程の口調の後に聞いた丁寧な言葉はとても俺に違和感を与えた。 そのせいで少し笑えた。 同じ声だから、かな。 そして 何故か最後の照れた声を可愛いと思ってしまった。 自分自身でも驚いた。 ……。 …………――。 プルルル…プルルル…プッ 『…テメェ誰だ?』 「………こんにちは。」 [次へ#] |