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短篇集
02


迎えに行くと浴衣で着飾った雪里が出迎えてくれた。淡い水色が黒髪に映える。
いつにもまして魅力的に見えるのは何故だろう……

「キョン君、来たのね。じゃあ行きましょうか」

下駄を鳴らしながら二人で歩く。実は俺も面倒臭いと思いつつ浴衣を着ていたりする。
SOS団全員浴衣を着て来ること、と団長に念を押されたからだ。

「キョン君、浴衣似合ってるね!いつにも増して格好よく見えるよ」
「何言ってんだ。お前も似合ってる」
「そう言ってもらえると嬉しいな」

雪里は恥ずかしげにはにかんだ。
髪が風に靡く。

「そういえば今日は髪、縛ってんだな。ポニーテールか…。普段の髪を下ろしてるのもいいが新鮮な気がするな。」

歩く度に揺れる髪を見つめる。
魅力的に見えたのは髪型のせいでもあるな、とふと思った。

「あんまり見ないでよ〜。恥ずかしいな」
「いや、でも似合うな、お前」
「似合うかな?不安だったんだけど…」
「いや、すごく似合ってるぞ。毎日それで登校して欲しい位だ…」
「本当?キョン君」

髪型への噛み付きに雪里は驚いているような不思議だというような微妙な顔をした。
そりゃそうだ。俺も少しポニテに食いつき過ぎたか…

「この髪型を随分推すね。一体どうしたのさ」

あぁ……やっぱりそう思うよな…

「マジでお前が似合ってるって事もあるが…俺は所謂ポニテ萌えだからな」
「キョン君、ポニテ萌えだったの?」
「あ、あぁ。改めて言われると何か肯定しづらいが。余り人に言った事ないし」

恥ずかしいな、とキョンは言いながら夏祭り会場である近場の神社に向かう足を進めた。



「ポニテ萌え……そうなんだぁ〜。へぇ〜…」

雪里は嬉しそうに頬を緩ませ、キョンが好きなふんわりとした笑顔を見せた。

「どうした?雪里」
「ポニーテールにしてきて良かったなぁ、って思って。さっきまで髪を括るか、纏めてアップにしちゃうか随分長い間迷ってたの」
「なんでそんなに髪型一つで迷うんだよ。格好一つによく時間が掛けられるな。俺には無理だ。理解できない」

この問いに雪里は笑った。

「そんな事も分からないからモテないのよ、キョン!全っ然乙女心が分かってないね!」
「じゃあ聞くが、何でだよ」
「聞いちゃうの?」

なんで雪里が答えを渋るのか分からなかったがキョンは頷いた。
すると、雪里はキョンの隣を歩いていたところを急に足を速め、2、3歩前でキョンに向かって振り返った。
その頬はピンクに染まり、微笑みを浮かばせていた。目線をしっかりキョンの瞳に合わせて。

少し、沈黙が流れた。


「え……何でだよ…」



「――だって、大好きな人の前では可愛くいたいじゃない?ね、キョン?」



そう言って、まぁ、鈍感なキョンには分からないかな?なんて言いながら大事な幼なじみは早足で先を歩いて行く。

雪里の発言に驚いて、立ち止まってしまった俺と雪里の距離が離れて行く。
それだけ俺には衝撃的だった。


何だ、今の台詞は…。
大好きな人……って、俺?…なのか?
いやいや、谷口によるとA+クラスの雪里が冴えない俺を??――…無いな。
自分で言うと悲しいが…。
あいつの言い草からすると、今日夏祭りに来る人物になる。
まさか………古泉?
いや、そんなことがあってたまるか!!
それは断固拒否だ。俺が許さん。


   


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