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鈍感先生と絶望先生
01


「とりあえず私が呼んだら入って下さいね」

ビックリさせましょ、と蘭乃さんは先程までの緊張ぶりを感じさせない程に楽しそうだ。

「分かりました」

言われた通りに2のへの教室前の廊下で耳を澄ませて待機。



一方、
蘭乃は教室の扉をスライドさせ入室。

「皆さん、おはようございます」

いつも通りの明るい挨拶。
蘭乃は2のへ組の教室に入り、教壇に立った。生徒達の視線が教師に集中する。

「今日は皆にいいお知らせがあります。
前から言っていた事ですけど先生は代理として皆の担任をしていたわけです。
が、春になったという事で2のへにも新しい担任の先生が来てくれました〜!」

蘭乃はとても嬉しそうにはしゃいでいる。



「「「えーーーー!!!」」」


各方面から批難の声が上がった。
教室中が一気にざわめき始める。

「あれ?」

(皆嬉しくないの…?)


――蘭乃先生がいいよ!

――先生、辞めないで!!

――他は嫌だ!!

――明日から何を楽しみにして登校すればいいんだー!!




それを聞いて廊下で一人佇んでいた望は心に傷を受けていた。

(私だって、冴えない男教師より美人で優しい女性教師の方がいいと思いますよ…)

自分は別に好きで担任のポジションを得た訳ではない。

学校の壁に打ち付けた頭が痛そうだ。






「先生は保健の先生に戻るんですか?」

「え?……あぁ、ちょっと待って……」

蘭乃が
「私はなんて幸せ者…っ」
と感動の涙を流していると、生徒の一人がそう質問してきた。
鼻水をきちんとかんで対応する。

「えーと…いえ、新しい担任先生がお仕事に慣れるまでは副担任かつ養護教員として皆と一緒に居ます」

その後は保健室に完全に移るけれど…


「良かったぁ〜。じゃあ担任が慣れなければいいんですね!」


――あぁ、そっかぁ。

――それならOKね。

――なるほど。


それを廊下で聞き耳を立てていた望は、

「あ。なるほど」

と、手をぽんっと叩きつつ納得していた。
まさに目から鱗だった。

それにしても、生徒に愛されているんだな、と望は改めて蘭乃を感心した。






何故か新担任を受け入れてくれるよう的な雰囲気になったクラス。

(生徒達の間で一体何が…?)

まぁ、これで良し。あとは紹介だな。
蘭乃は安堵したが、まだ望が廊下で待ち続けている。

(望さんを長い間待たせてしまった…
申し訳ないな…)

思い切り出鼻をくじいかれたが、気を取り直して担任の紹介へと話を押し戻す。


「早速、新しい担任の先生を紹介するね。
とても素敵な人だから安心して!皆言う事は聞くように!」


全員が頷くのを確認して、望を呼んだ。


「先生、どうぞお入り下さい」


クラス全員が一斉に扉に目を向ける。






その頃、
望は蘭乃の素敵な人発言に照れつつも、
無意識にプレッシャーを掛けられた!!
と、ガラにもなく焦っていた。



    

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