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鈍感先生と絶望先生
01


あの大和撫子との出会いから30分後ほど、
一度帰宅し用意を素早く終わらせ、望は今日からお世話になる予定の職場に到着した。

そこは学校である。



「教師か…」

学校を見上げ、改めて仕事の事を考えると今朝の女性を思い出した。

「そういえば、あの女性、何処の病院に勤務してるんでしょうかね」

医療系の仕事だと言っていたから、医者か看護婦だろうか。
少なくとも徒歩だったから近くの病院かな?

気が付けば彼女のことを考えている自分に望は一人、苦笑いをした。

しかし、
彼女とは朝に偶然出会ったまでのこと。
また会えるという保証もなければ、そこらで見かけるような人ではなかった。
今日だけ、たまたまあの場所を通りかかった可能性もある。
つまり、また話せる事はない。

お得意のネガティブ思考が働いていく。

(せっかく私にも春が来るかもしれないと思ったのに…残念)

望は上がっていたテンションが冷めていくのを感じた。

(ま、一目惚れに良い事なんてないですよ。
どうせ死にたがりの私を知ったら百年の恋も冷めますよ)

そう思考に決着をつけ、
学校の門を通るとまず職員室に向かった。






玄関口に行けば教頭が迎えてくれ、校長室に案内された。
無難な挨拶を交わし、本題に入る。

「あの。私の受け持つクラスとは一体どういったクラスなんでしょうか?」

「ああ、えぇっと……
とりあえず前の担任はストレスで入院してしまって辞職されました。
現在は養護教員に担任と養護教員の仕事を両立させていますよ」

「ストレス?いや、それより養護教員が?そんなの聞いた事がありませんけど…」

「まぁ、緊急だし、人手不足だし、頼んだら快く引き受けてくれました」


あの生徒達が随分と懐いているようで本当に良かった、と、にこやかに笑う校長。

面倒を押し付けたようにしか聞こえないんですが。どうなんですか。


「ストレスで担任を病院送りにするクラスの担任を引き受けるなんて、物好きがいたものですね」

「まぁ、彼女、変わり者ですから」

「不慣れでしょうから教師が板につくまで、彼女にクラスの副担任としてバックアップに就くように言っておきました。
困った事があれば彼女に聞いてください」

「それはありがたいです」

「では、まぁ、頑張って下さい」

「…はい、頑張ります…」







それから、校長室を退室し、職員室へ向かった。

(何か適当な感じだったな…あれで大丈夫なんだろうか)

(あ、養護教員の名前を聞くのを忘れてしまった……変わり者……仲良くできるのか?)

(それにしても問題児のクラス。
自分に担任なんて務まるわけがない…!!)


問題が山積み過ぎる。
良いことなんてなかった。
やっぱり来るんじゃなかった。登校拒否すればよかった。
と望は後悔の念に苛まれながらも扉を開け、職員室内に一歩踏み出した。



  

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