星屑の煌めき
(銀魂/銀時)移りにけるなり空の雲
「むう、この体調の悪さ。アレだな、コレは」
「なにしてんだザビ子」
「お、銀時。丁度いい所に来たにゃ〜。飲み比べしようぜ、私の金で飲み明かしていいから」
「まっじで〜、ひゅー、ザビ子様イカスー」
「呆れるほどに棒読みだけどそれが銀時よなぁ、よーし、夜の街に繰り出すぞー！！」
◇ ◇ ◇
「っぐ、やべぇ……調子に乗って許容量超えて飲んだ……ぎぼぢばりぃ……」
「なんでぇ、もうギブかよ銀時。まだ三軒目だぞ、まだ飲めるろぉ？」
「ザビ子、おめーはザルだから平気だろうけどなぁ？ 俺は適量で楽しむ派なの」
「嘘つけ。私知ってんだかんな、お前常々長谷川さんとハメ外して飲んでるろ」
「げぇ、なんで知ってんだそれを」
「知らない方がおかしーでしょ。あんだけぐっでぐでになって帰ってくりゃ」
「正論過ぎて反論浮かばねーや。て事でこの飲み会はお開きにして帰ろーぜ」
「まだ私飲み足りないからまだ飲みますー、お前も付き合いなさい？」
「ばっかおめ。おめーのソレに付き合ってたら肝臓が幾つあっても足んねーよ」
「甘味でも何でも好きなの食え、ソフトドリンクでもいいから飲んでろおめーは」
「どうしてそんなに頑なに俺を開放してくれねぇのか。おねーさん餡蜜ひとつ」
「……そんな状態でも甘味食うのか。
いいじゃん、私、冷静に考えてみたら戦時中以外銀時とこうして飲み交わした事なかったなって思って、今やりたいからやってるの、おーらい？」
「はぁ？ あん時腐るほど飲み明かしたじゃねーか。もう一生分ぐらい飲み明かしたじゃねーか」
「あの時と今とじゃ状況が違うでしょ。ね、もう、良いじゃん私に付き合ってよ」
「おぉ、まあ、別に良いけどよォ……タダ酒だし、いやもう酒は無理だけどよ」
「弱い酒でも飲んでろ、私だけずっと酒飲んでるのも寂しいやんけよ」
◇ ◇ ◇
「お"え"ぇ"……」
「え、銀時ほんと弱くなったな……ほらしっかり、ちょっと、歩ける？」
「ぎぼぢばり"ぃ〜……」
「あーもー。ほら私に捕まって、帰路ぐらい歩くよ」
「ちょま、一回待おぼろろろろ」
「吐くな吐くな。ねえ銀時、あんた体重どんくらいだっけ？」
「ろくじゅご……」
「おっけおっけ、七十なけりゃイケる、よし銀時負ぶされ」
「えーやだわ〜」
「千鳥足のアンタが真っ当に歩いて帰れりゃな〜」
「ぃやだいたいお前そこまでの筋力ねえだろ、前と違って」
「今も昔もやる事は変わってないから体は鍛えてるよ、ほらいいから、早く」
「女に担がれるぐらいならのたれ死ぬわ俺」
「喧しゃアァ！！ 男の矜持なんぞ私の腹の足しにもなりゃしねーんだよ！！」
「おごぉっ！！！！」
「よし、これで担ぎやすくなった」
「…………ッぉま、ふつ、腹パン、するかぁ……？？！！」
「煩いお荷物。文句言いたいならちゃんと自分の足で歩けるようになりなぁ〜」
「…………ていうか、男を軽々おんぶ出来る女ってどーよ」
「ゴリラかな」
「自分で言うなよ始末がワリィ」
「ふふふ、『鬼神の忌み子』はちょっとやそっとじゃ傷つかないのさ〜♪」
「……」
「？ どした銀時、急に押し黙って」
「ぃんや、オメーも難儀な子だと思ってよォ」
「んっふ、急に私に全体重預けてきたな貴様、安定はするけど、さっきまでグジグジ言ってたのにおまえ〜」
「楽出来るんだらそれに越したこたァねーなぁって思って〜、体重預けたかんなお前に」
「全く、まあ私だから良いけどさ、他にはやらん方がいいぞ、コレ。
まあそうそうお前を担ぐような奇異な人間は居らんかぁ、だははー」
「ん、そういうこったな。じゃあ俺はお前に全てを委ねて寝るわ、家に着いたら適当に落としてくれや」
「は？ ちょ、おい寝るな、余計重くなんだろ？」
「……」
「っぐ、マジで寝やがった。重いなー、くそー。
……ふう、まったく。あの頃から全然変わってないなぁ、かわいいかわいい、私だけの弟たち。ふふ。
松陽せんせの元で馬鹿やってた頃からちっとも変わらない、図体だけデカくなったもんだね。
うん、そんなんでも可愛いもんだ。なのに、なんでこうなっちゃったんだかね、銀時……」
「……」
「……どうしてなんだろうね。どうして私はこんなにも────私はね、銀時、お前が愛しくて愛しくてたまらないんだ……。
…………この先お前が私を選ぶ事はないって分かっていても、私はお前を愛してるよ。うん、それで幸せだから別にいいんだ……。
こうしてお前の傍に居られることが、得難いものだから、これ以上は望まねぇよ……」
背中越しの独白。
『んなもん、とっくに知ってたさ』
『けど、お前はそれを望んじゃいめぇよ？』
『だから知らねぇフリをしてやるさ』
『本当に救われないのはどっちなんだかな……』
◆ ◆ ◆
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