星屑の煌めき




(銀魂/銀八)愛に変わる日曜日
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「よう、ザビ子」

「……ぎ、銀八先生……お早う御座います……ど、どうして私の家に」

「────気まぐれだ。早く起きたついでに迎えに来た」

「……そうでしたか……執事長が慌ててるから何事かと……確かにコレは予想外でした、執事長にはあとで事情を説明しておきます。
しかし、それにしても朝早くが過ぎませんか銀八先生? まだ明け方……五時じゃないですか」

「だから言ったろ。早く起きたついでに迎えに来たって。今日は俺がお前をエスコートしてやるから、早く着替えて来いよ」

「…………分かりました。それでは、とりあえず応接間にて待機してください。十分ほどで支度を整えますので」

「おー、なる早で頼まァ」





◇ ◇ ◇






「お待たせ致しました銀八先生。思いの外支度に手間取ってしまい十分の遅れを取りました」

「おう、いや以外と早くて驚いたぐらいだ。普通女の支度ってのはもっと時間かかるもんだろお」

「それは、銀八先生の経験談、という事で宜しいので?」

「ノーコメント!!」

「答え言ってる。まあ大体今までの会話で銀八先生の女性遍歴は分かったのでその口の軽さは考えものですが、今は考慮すべき欠点だと思っています」

「どの道それ貶してるからなザビ子?」

「あれ? そう聞こえちゃいました?」

「そうとしか言ってねぇくせに、しゃーしゃーと」

「ふふ、さてそれはどうでしょうね。
────ところで銀八先生、こんな朝早くからどこへ連れ回す気だったんですか?」

「んー? ベタに遊園地行くべと思って。なんと今から行けば開園前に並ばずに行ける算段だ」

「いや日曜日の遊園地なんて激混みも良いところでしょう」

大丈夫大丈夫だいだい、そんな遊園地行かねぇから。今日行く所はそんな上等なモンじゃねぇよ」





◇ ◇ ◇






「────騙された。なにが遊園地ですか、ここどう見ても学校ですよね」

「睨むな睨むなって、この抗議の視線は分かるし騙して悪かったから睨むなよおめーその目付き人殺しのそれだなァ、おいぃ〜」

「……むう、なんだって休日に、それもこんなクソ朝早い時間に学校来なきゃならんのですかね。全く遊園地と聞いて少しだけ心弾んだ私が馬鹿みたいじゃないですか」

「へぇ、おめーでも心弾む事あんのかザビ子」

「そりゃあ、そうですよ。ぶっちゃけ私遊園地とか行った事ないですし」

「あ? そうだったのか」

「そうですよ。銀八先生忘れてるかも知んないですけどね、私こう見えてマジ金持ちなんで、自由はあれど自由意志なんてなかったんです〜。
高校までは自由に生きていいという建前はあれ、そんな自由、私にはそもそも用意されてなかったんですよ」

「金持ちは金持ちで大変だなぁ。まあそんな事より中入るぞ、今日は誰も居ないから不法侵入し放題だかんよ」

「聞けよ私の悲しい身の上話、なんだよお前このやろう」





◇ ◇ ◇






「誰も居なさ過ぎて逆に味気ねぇな」

「逆にね。新鮮ではありますがやはり校舎というのは人がいて賑わってこそその役目を初めて果たすと言うか、不思議ですね。
同じ建物に居るのに、こうも受ける印象が違うというのは、なんとも言えないです」

「おぉ、ついこの前まで人間の事をヒトとして見てなかった奴がそんなセリフ吐けるようになったか、先生も感慨深いぞぉ」

「調子乗んな糞天パ。私だってこうなるとは考えてもいなかった訳ですし、自分が一番驚いてるんですよ?」

「おーおー、良い傾向じゃねぇか、そいつァ。それもこれも偏に俺のおかげか〜、すげぇ敏腕教師だな〜」

「ハッ、言ってろ。────この廊下って、こんなに広かったんですね……」

「おー、そうだなぁ。変わらねぇ筈なのに広く思えんな」

「ええ……無機質で排他的で、吐き気がするほどの開放閉塞感です……」

「……。教室行くか、ザビ子」

「はい」





◇ ◇ ◇






3Zの教室ここも静かで誰も居ねぇと不気味だな」

「ふふ、そうですね? ここにはいつも賑やかで煩くて喧しくて、馬鹿みたいに底抜けにけたたましく騒ぐクラスメイトがいないと、変です」

「ザビ子────良かった、やっとこのクラスをお前も認知してくれたようで助かるぜぇ?」

「ええ、やっと理解しましたよ。このクラスは他のクラスと違う、一人ひとりが認め合い尊重し合い貶し合っているうるっさくて────あたたかいクラスです」

「────────…………」

「それで改めて……一週間の恋人役茶番劇の相手を銀八先生にして良かったって思えました。うん、銀八先生で良かった。
そして、願わくば────本当の恋人この先の伴侶銀八先生あなた"が"良かった……」

「……」

「なんて、今更────都合のいい言葉ですね、銀八先生には感謝だけを示しておきます。
銀八先生。この一週間、本当にありがとうございました。楽しかったです、今までの私には見えていなかったモノを沢山る事が出来ました。
貴方はたくさん、たくさん私の価値観一つひとつを丁寧にブチ壊してくれました。
歪に凝り固まった思想わたし普通アタリマエ人間考え方にしてくれた事、感謝の念が耐えません。
短くて長い一週間、私にお付き合いくださった事、この先の地獄でも忘れません……」

「────ザビ子、」

「ふふ、言葉にすると難しいですね。私、まともに誰かと会話した事なかったから、ちゃんと感謝の言葉になってました?」

「────ああ。伝わったよ。お前の言葉で、お前の気持ちが。ちゃんと伝わったさ」

「良かった……私、この一週間の事を絶対に忘れません。
最期に、楽しい記憶でこの先を乗り越える気力ができたので、私、大丈夫そうですね?」

「俺にはそうは見えねぇけどな。ザビ子、お前今ちゃんと笑えてねぇぞ」

「……え? そ、そうですか? やだな、最期は笑顔で感謝の気持ち伝えようとしたのに……」

「最期だって思ってるから、笑えねんじゃねぇのかザビ子。
この一週間の事を得難いと思ってるから、終わりがくるのが恐ろしく思えてるんじゃねぇか?」

「そんな、筈────だってこれは父親の目を欺く為の緊急措置で、私の苦肉の策で、私の思い付きで、私のワガママで、私の、大切な────失いたくない関係……」

「────ザビ子、今お前がどんな顔してるか分かるか?」

「……笑ってる筈です」

「んな訳あっかよ馬鹿が。おめー今泣きじゃくってるかんな」

「……なんででしょうね、なんで私。泣いてんですか?」

「それはお前が一番良く分かってんじゃねぇか?」

「……………………せん、せぇ、私……このまま知らないジジイの元へ嫁ぐのは嫌ですぅ……!!
まだ、こうやって先生と、一緒に居たいですっ……そばに、居たいです……!!
まだ……こうして、あなたと、笑っていたいです……!!」

「────ああ。知ってた。お前の本当の言葉キモチで聞けて良かったよ。
これで俺も心置きなく言えるってんだ、ザビ子、一回しか言わねぇからちゃんと聞けよ」

「────────・・・・・・?」

「ザビ子。お前のこの先の人生、俺と歩んでみねぇか? お前の自由を尊重し、お前の意見を鑑み、お前の事を一人の人間のして認めてそばにいてやる。
お前がその気あるなら、この一週間だけの契約を、今生の契約にしてみねぇか?」

「────……っ、せんせ、それって」

「……いつぞやのお前のセリフを借りて言うとアレだな、『結婚を前提に付き合ってください』って事だな」

「っ……いい、んですか? そ、んな、私の都合の良い幻聴とかじゃないです、よね……?
銀八先生、私と、その……このまま正式にお付き合いしてくださるんですか……?」

「お〜、最終的なゴールも含めてあのときの返事、今してやるよ。
────ザビ子、結婚を前提に俺と付き合ってくれるか?」

「────はい……こちらこそ、よろしくお願いします────!!」

「あ、でもおめーの親父さんに会うのダリィな、色々嫌味とか小言だとか言われるな完全にコレ、俺が……」

「ふふふ、そんなの、私がさせませんよ。銀八先生も知っての通り、口汚いんですから私。
アレが口を挟む間与えないぐらい罵倒してやります、安心してください」

「そうか、そうだったな」

「ええ、だから────」

「お?」

「お礼をきちんと言わせてください。
銀八先生、私に恋を教えてくれてありがとう────……」















































緋を帯びて燃え上がる頬を抑える術などなくて、
それも構わないと緋代鳥はやわく微笑む。


恋を知るには短くて、
愛を知るには十分で。
鮮烈な輝きをもった一週間の終わりは、
この先に続く人生の始まりに過ぎない。

「────あなたを、あなたに出会えて良かったです……」




一週間シリーズ・了





























































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