星屑の煌めき
(Fate/桜)不磨の傀儡は眠らじとも
「こんちゃーすー」
「え? ザビ子先輩?」
「あ、桜。こんにちは、式以来だね。今誰も居ないと思ってたけどまあいッかなって普通に不法侵入した、悪い悪い」
「……えっと、はい。こんにちはザビ子先輩、お久し振りです。ごめんなさい、今ちょっと手が離せなくてお出迎えが出来ませんでした」
「いっていって。私が連絡なし勝手に来た訳だし、桜が気に病む事はない。
勝手に上がり込んでごめんな、桜。……ん? そういや士郎は?」
「先輩に御用なんですか? 先輩なら、さっき出掛けたばかりなのでお帰りは遅くなると思いますよ?」
「そっかそっかー。ちぇー、せっかく料理教えて貰おうと思ったのに……あ、桜、これ一応手土産の巷で最近話題沸騰中人気店のケーキ。冷やしてあとでみんなで食べてくれ」
「わあ、有り難う御座いますザビ子先輩っ!! すごい、ここのケーキこの前テレビで紹介されてましたけど、手に入れるのは三年先って言ってましたよ!?」
「え? そうなの? あー、だからここ最近鬼の様に忙しかったのか……てか、ちょっと、私そのテレビ取材知らないんだけど」
「え?」
「あれ、桜知らなかった? 私、そのエトワールの店長さんなんだよ」
「……っ、ええええーーーー!!?? そ、そうだったんですかぁ!!??」
「え、私言わなかったけな? 遠坂に言ったから当然桜にも伝わったのかと思ったのに……わりとポカするからそれのあれかな?
まあそんなんでな、私は店長さんだからな。ケーキの一つや二つ持ってこれる。
桜も食べたくなったら遠慮せずに言ってくれ、いつでも職権乱用して作って持ってくるぞ」
「そ、そんな事しちゃ駄目ですよザビ子先輩っ! わたしなら大丈夫です、食べたくなったらちゃんと順番を守って買わさせていただきますのでっ。
それにしても────ザビ子先輩、洋菓子とか作られるのお上手でしたよね、そういう道に行くのは自然と言えば自然ですね」
「そういうものですよ。私には魔術師としての才能は見受けられなかったし、私の家は私で幕を閉じるけど、栄枯水彩? ん? なんか違うな」
「えっと、栄枯盛衰、ですか?」
「ん、それそれ。世の中は所詮諸行無常だよねー、遠坂には悪いけど、私はそんな魔術師然とした心持ちも信念もないし。幸いうちの家系はたった300年程度の家だし、途絶えても大丈夫大丈夫。
ほあってっと、桜、台所借りてもいい? 士郎帰って来るまでの間お茶請け作りますぞ」
「えっ、人気店の店長さん自らお茶請け作ってくれるんですか?!
どうぞっ、お好きにお使いください! 配置はザビ子先輩が使ってた頃と変わってませんので!!」
「お、おう。桜かお怖い。目、目、目血走ってる……なんか、リクエストとかある? 折角だし桜の好きなもの作るよ」
「あ、じゃあ────前に、ザビ子先輩が作ってくださったスイートポテトが、食べたいです……」
「オッケー。秋の名物だし、なんか鬼の撹乱かって言うぐらいさつまいもあるし、ちゃちゃっと作りますか!」
「因みにそのお芋は藤村先生が持ってきましたよ」
「ダロウネッ!!」
◇ ◇ ◇
「凄いです……段ボール箱三つ分のお芋が殆ど消えちゃいました……」
「つい魔が差してスイートポテト以外にもスイポテチーズケーキとパウンドケーキ、おいもクッキーにマフィン、芋ようかんとスイポテパイに〆はグラタンまで作ってしまった……。
すまん、あとで光熱費と材料費払う。そして、こちらご注文のスイートポテトでございます」
「わあ……有り難う御座いますザビ子先輩! むしろあの量のお芋、どうしようかなって先輩と考えあぐねてた所なんで、助かっちゃいました。
グラタンはお夕飯のメインにしますね、ザビ子先輩もお夕飯食べて行かれますよね?」
「そうだなぁ。夕飯までに士郎が帰って来なければ、と言いたい所だが、新婚の二人の邪魔をしては罰が下るだろうし、それまでには退散する予定」
「……ザビ子先輩、こうしてまたザビ子先輩が来てくれたのに……ザビ子先輩、帰っちゃうんですか……寂しいです」
「ぐっ…………ぬぬ。よし────降参だ、夕飯食べていく。
積もる話もあるし、なんだかんだで私も桜に会いたくて、会えなくて寂しかったし」
「ぁ、有り難う御座いますザビ子先輩っ!! じゃあわたし、ザビ子先輩が作ってくださったお芋グラタンに合う副菜、たくさん作りますねっ!!」
「うん、そうしてくれ。しかし、私は本当に士郎と桜の新婚さん宅にお邪魔してていいのかな?」
「良いもなにも、ここはザビ子先輩の帰ってくるお家じゃないですか、ザビ子先輩がいない方が駄目なんですよ?」
「────桜……本当に士郎には勿体ない嫁だ、ほんと可愛いしんどい。
この衝動、なんとするや……桜、私が使ってた余った布地はまだある?」
「はい、まだザビ子先輩のお部屋にありますよ。あ、因みにザビ子先輩のお部屋はザビ子先輩がいつ帰ってきても良いようにちゃんと綺麗に掃除してましたからっ」
「出来た娘だ。メジャーメジャー、おお、小物配置もそのままと来た、桜、おいで、採寸しよう」
「ふえっ、も、もしかしなくてもザビ子先輩、わたしのサイズ図ろうとしてますよね!?」
「うん、桜に服、作りたい。だめ?」
「ふぬっ、だ、駄目じゃないです、けど、そんな、ザビ子先輩、わたし貰ってばっかで、困りますぅ……」
「そんなこと無い。私の方が貰いっぱなしだ、桜にいくら返しても返しきれない程に貰いっぱなしなんだ。
だから、私に出来る事でソレを返していきたい、すこしずつでも、返していきたいんだ」
「ザビ子先輩……」
「はい、と言う訳で姉妹お揃いワンピースを作りたいと思っています。
まず桜のサイズを正確に示したいと思いまーす、はい、まずバストから!」
「は、はい────────ど、どうぞ……お願い、します……」
「はいはい…………む。待って、桜またおっぱい大っきくなってない?」
「せ、先輩っ……!! そんな恥ずかしい事真顔で言わないでくださいぃ〜!!」
ああ、それは確かに幸せの音だった。
「ただいまー……って、うわなんだザビ子来てたのか……なんの用だ、お前店の方はほっぽっていて良いのか?」
「おかえり士郎。今日は定休日だからな、それより士郎、和食教えて、うちの旦那が和食が食いたいってうるせーのよ」
「ああ、教えるのは良いがタダとは言わんぞ。そこの段箱に入った芋を片付けるの手伝ってくれたら────」
「それは大方済みましたよ先輩、ザビ子先輩がお芋を使って色々作ってくれたんですっ」
「えっへんえっへん。だから衛宮印の和食を私にレクチャーしてくれ」
「話が早くて助かるぞザビ子、じゃあまず夕飯のあとにしてくれ、腹減って死にそうなんだ、俺」
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