星屑の煌めき
(復活/骸)贖罪の園を断絶する花嫁
「ほあー、退屈になるぐらいいい天気だなー」
「あなたが退屈にならない日なんて存在するんですかザビ子」
「失礼な、あるわよ、無礼な」
「そうですか。何故目があからさまに泳いでいるのかは追及はしないでおきましょう」
「骸め、私をナメておるな? 私を怒らせると、あの、あれ、アレだぞー!」
「全く要領を得ないですね、ところで珍しく早起きをしたのは何故でしょうか?」
「天気予報で今日が最後の晴れだって言ってたから洗濯物一気に洗って干しちゃおうって思って、犬と千種の協力の元お洗濯ディなのですよー」
「ザビ子の洗濯物が明らかに多いのになんれ俺が手伝わなきゃいけねーんらびょん」
「……めんどい」
「みんな快くお手伝いしてくれているのである」
「むちゃくちゃ無理やりイヤイヤ手伝ってますよね」
「二人はツンデレだから。言葉は冷たいけどそういう事なんだよ」
「ザビ子は自分にいいように変換しすぎらびょん」
「おっまえ、パーラーフルールの一日十個限定のフルーツ盛り合わせパフェ買ってやったろ、それに見合うだろ、これは」
「……」
「千種を見ろ、黙々と洗濯物を干し広げていくぞ、流石だ千種、結婚しよう」
「それはとても……一昨日来て欲しい……」
「普通に断られるより傷つく。という訳で骸もお洗濯ディに参加して、タオル干す係に任命する」
「僕は普通に御免被りたいので部屋に帰りま────っ?! 敵襲ですか、なんだこの空を切る様な音は……!!」
「敵の気配はないのに……!? 半径一キロにそれらしき殺気もない……なのに、なんだ、この目下飛来中ですみたいな音は……!!」
「……近い」
「!? ザビ子危ねえ!! 上!!」
「え゛え゛え゛え゛こういう時って大体私が被害に────……へぼぁ!!!!」
『ぼわん!!!!』
「ゴホゴホ……っ、ザビ子、無事ですか!?」
「おいザビ子大丈夫ら!?」
「……ザビ子生きてる?」
「……ケホ、えー、なに急に煙モクモクなんだけど、なにが起きた……」
「……おや」
「……あ?」
「…………」
「────うっそ、なんでみんな若返ってんの?!」
◇ ◇ ◇
「一体何が起こったんでしょう、どうしてこんな事になったんでしょうか」
「いや〜十代の肌最高だわー!! ねえ千種もハグさせてよーーーー!!」
「……断る」
「いや〜あとで捕まえちゃうもんね〜!! ひゃっはー合法ショタお触り放題だわー!!」
「ぐええええ、ザビ子ザビ子、俺の首絞まってる絞まってるキマってる……!!」
「え、ごめん犬。いやーでもホント好き、なんだこのキメ細やかな肌……もちもちのお肌……触るとしっとりと吸い込まれる様な質感……ヤバみofデストロイって感じ……待って無理尊い」
「当のザビ子本人は、なにやら先程から犬を抱き締めて離さない訳ですが……あなた、本当にザビ子なのですか?」
「骸も若い〜、ていうかヤバいぐらい少年の骨格してたのね私身近に居たのに見てなかった……当時は年上がタイプだったから、同年代及び年下は眼中ないとか、馬鹿だわ……。
骸もあとでハグさせて、もう誰でもいいほっぺスリスリさせて抱き締めたい離さない」
「あーーーー、この残念な感じザビ子らびょん……見た目がっつり大人になってんのに、なんれこんなザビ子なんらびょん」
「……悲しいほど人は変わらない。悲しいけどザビ子は大人になってもザビ子のままって事」
「千種のそのクールさ今は磨きかかってるから安心して大人になって欲しい。でもそんなところが好き、今すぐにでもハグさせてくれさい」
「断る」
「あれ? 千種にしてはめっちゃ速いスピードで喋った。そんなに嫌かよちくせう。もういい、犬と骸を抱き締めるだけで満足してあげるよとりあえずは」
「…………ところで。そろそろ本題に入りたいのですが」
「む。そうだね、ショタを堪能するのはここいらにしておくか。
こほん、それでは改めて自己紹介でもすっか。
────お久し振りです、御三方。私は十年後のザビ子です。
なんでこうなったかと言うと、恐らくどっかのアホ牛が自らに向けて放った十年バズーカが外れてこの時代の私に着弾したって所かしらね。
だからこの時代の私は十年後に居る、安心して、さっきまでフツーにデスクワークしてた所だから害はない筈よ?」
「おぉ、急に大人の女感出したびょん……それはそれれキモいびょん」
「まーだザビ子ちゃんの愛され方が伝わらなかったのかにゃー? おらもっかい強制ハグイベンド開催だゴラ」
「ぎにゃぁぁぁぁ」
「……ザビ子。やめろ」
「きゃ、千種ったら顔怖いんダカラ!!」
「……それで、この事象はいつ収まるんですか?」
「んー、本来なら5分で元の時間に戻る筈なんだけど、とっくに5分過ぎてるしな、まーた壊れてんのかねあのバズーカ」
「随分と悠長な態度ですねザビ子、僕としては今すぐにでもこの悪夢が終わって欲しいんですが」
「ジト目やめぇや骸、私割りとその顔好きだけど、眉間にシワ寄ったら戻らないぞ」
「話を逸らさないで欲しい。あなたは本当にどうしてそうも構えてられるんですか、この時間のザビ子が危険な目に遭ってると思わないんですか?」
「はぁ? 危険な目に遭う訳ないじゃん、だって私────……」
「……?」
「何故、言葉を濁すのですか?」
「てゆーか……俺はいつ解放されるんびょぉん」
「千種、今日は何月何日かな」
「……今日。ザビ子、お前にとって、大事な日」
「そうか。よし、犬を任した千種。骸、ちょっとザビ子ちゃんに付き合いなさいお外行くぞお外ーいえー!!」
「えっ、ちょ、なにをいきなり突然────……」
◇ ◇ ◇
「ふむー、黒曜ランド、ほんと懐かしい。今はもうここないからね、ふふ、この程良いオンボロ感、いいわ」
「わざわざこんな所に移動して、なんの話があるんですか、あなたは」
「まあ別に大した話じゃないんだけどさ。多分、こっちの私は絶対言わないだろうから、大人になった今の私なら言える事を君に伝えようと思う」
「?」
「────今日、君の誕生日でしょ。おめでとう骸。ありがとう、私を拾ってくれた事、感謝しきれない程感謝してる」
「……嗚呼、言われてみればそうでした、今日は誕生日だったんですね」
「いつの記憶か分からないけど、パーラーフルールでお誕生日ケーキ予約したんだ、多分この時の記憶だと思う、あとで楽しみに知らん顔して驚いてあげてね。
私、わりと義理堅い良い女なんだからね。ちゃんと喜んで欲しいわ」
「……あなたから言われると少しばかり変な気もしますが、礼は言わないと。ありがとうございますザビ子……」
「ホントに感謝してる〜? なんか疑心暗鬼に満ちた目を向けられるの、ちょぴっと悲しい。
これから先十年も連れ添うパートナーがこんなにも今の君に感謝してるってのに君はそうでもなさそう」
「いえ、そんな事はないです。とても感謝しています。
ただ、やはり今のあなたはザビ子とは思えない程大人に成長していて、少し追い付けないだけですよ」
「骸も嘘が下手ね。この時の骸は嘘が下手なのよ、私ちゃんと識ってるんだからね?
覚悟して、君が思ってる以上に私は狡い女なんだから。君の計画なんて全部お見通しよ?」
「────さて、なんの事やら」
「ふふ、その顔は変わらない。私、骸のそうやって笑う顔とても愛しいって思える。
だから、この先の人生、貴方と共にありたいって思えた。
この先の人生に訪れる苦楽を共に。
この先の人生に訪れる絶望を共に。
この先の人生に訪れる幸福を共に。
この先の人生に訪れる狂気も共に。
貴方の為に生きていく、貴方の為にこの身を捧げる。
そう、思ってるんだよ。少なくとも、今は自分の感情に気付いてないけれど」
「────なんだか、その言い回しは少し、誤解を受けます……」
「うふふー、存分に誤解しなさい、それが誤解でないと気付く日が近々訪れるんだから〜。
だから、最後だから、ハグさせて。私がもう二度と貴方の温もりを忘れない為に」
「……。仕方ありませんね。ザビ子が言い出した事ですから、責任はそちらにありますから、後で騒がないでくださいよ」
「ん。ありがと。……ふおぉ、線が細! ほっそ!! 待って無理腰ほっそ!!?? なにこれ筋肉ある!?」
「本当にザビ子でしたね、なんかしおらしい空気とセリフで騙されかけましたけど間違いなくあなたは本当にザビ子でした」
「ちょ、まだ堪能させてよ十代の腰の細さを堪能させてよ、逃げるなって、まだ楽しんでないぞ!!」
「よくあの意味深な言葉の後でそんな態度でいれますね、フラグブレイカーな辺りザビ子は大人になってもザビ子なんですね、悲しいです」
「まーまー、三つ子の魂百までじゃん。それにさ、ふざけてないと、ちょっと泣いちゃいそうだから。
ふざけさせて。そうじゃないと私、多分、君に触れられない」
「────────ザビ子……」
「……骸、多分今言っても訳分かんないと思うかも知れないけど、これだけは言わせて。
私ね、君に」
『ぼわん!!!!』
「えっ、なんですかこのタイミングで?!」
「ケホケホ、私マジで骸と……あれ?! なにしてんの骸、なに私に抱きついてんのキモ!!!!」
「ゲフゥ、不可抗力で冤罪で無罪です!!」
「ちょっとマジでなんなの、さっきはさっきで十年後の骸とかにダル絡みされるし、今は今でなんかめっちゃ抱き締められてたしキショい!!
ああああ、鳥肌全開だわ、なんだこの動悸と脂汗、まじもーーーーホント最悪だわ!!」
「……。コレがああいう女性になるのが、とても不思議でなりませんよ」
「む……トゲしかないなその言。私だって同じ事言いたいよ、この伊達男、大人になってもなんで私のそばに居てくれるんだ」
「それはこちらのセリフです。なんですか先程の思わせぶりな台詞と顔、本当に意味が分かりません。
淑女な見た目と残念な中身、どうしてこうなるまで放っておいたんですかね」
「……はぁ。文句は尽きないわ、この話はもう忘れましょう、そのほうがお互いの為よな。
外居るし、ついでに散歩してくる。骸、犬と千種と一緒に洗濯物干しといてよ」
「外出ですか。お気を付けてザビ子。行ってらっしゃい」
「────っ、やっぱ群を抜いてアンタのその優しい笑顔が好きだわ私」
十年越しの邂逅と熱量。
「あら、戻れたのね私。ふふふ、どうだった骸、十年前の私は?」
「今と変わらず可愛らしいですよザビ子、今の貴女も充分に魅力的ですが、昔の貴女は素直じゃなくて面白い」
「言うじゃないの。そういうあなたも、あの時の眼差しの方が私は好きだったわ。闘争心に燃えた瞳、素敵だった」
「……なんだか少し妬けますね。褒められているのに自分に向けられている言葉じゃないというのは」
「ふふふ、左手に誓って言うけど、安心して。私はもう貴方のモノよ」
6月9日 骸ハピバ!!
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