星屑の煌めき




(復活/山本)奇蹟の確率論




「山本ー、ちょっくら付き合えよー」

「ん? ああ、ザビ子か、どうかしたのか?」

「野球したいからグランドに来られたしー」

「唐突なのなお前〜、ま、野球関連なら任せろ。すぐ行くから先行っててくれ」

「40秒で支度しなー」




◇ ◇ ◇





「よぉー、わりぃわりぃ待たせたなザビ子ー」

「おっせーよ山本。おめどんだけ私を待たせるのか」

「だから悪かったって謝ってるだろ、勘弁な」

「ま、良いけどな。それより────ほいっ」

「うおっと、バット? ザビ子、野球するって……つまりそっちか」

「おうさ。私がひたすら投げるから、山本、お前打者やってくれ」

「二人でこれはキツくないか?」

「だいじょぶだいじょーぶ、私の後方にはネット張ったしボールは野球部から大量に仕入れてきたし」

「全然大丈夫じゃないよなそれ。野球部から勝手に持ちだしたのかそれ」

「武顔怖い。なによー、私がどうせ綺麗にしてんだから良いじゃないの! 徹底的に磨いてやらァ!」

「俺も綺麗にしてるんだぜー」

「じゃあデカいの当てなきゃいいんだー、よっ!!」

「お!! っし!!」

「ボテゴロあざーす」

「くっそー、次はぜってー当てるからなー!」

「当てても良いけど拾うの私とお前様だぞーっ、と!!」

「フンっ!! っだーくそ、カスったー!! ザビ子相変わらず良い球放るなー!!」

「ファーストゴロ。伊達に野球好きの親父に育てられてませんからね、走攻守揃ってますからー、よっと!!」

「っらァ!! ……てフォークかよ!! 球種増えたのなー!!」

「ピッチャーフライ。最近は消える魔球投げたいなーって思ってます」

「ホントお前がうちのチームにいれば、向かうとこ敵なしだぜー!」

「私も野球部入りたかったよーっ、とい!」

「うっし!! ドンピシャ!!」

「ぐっ、左中間抜けていったか……流石山本。野球好きの野球馬鹿の異名は伊達じゃあねーな。
まさか、私の必殺球も難なく打つとはなー、くっそー、悔しー」

「いやいや、今のはザビ子、あんまり慣れない握り方してたろ? 球ブレてたぞー?
ツーシーム……じゃない、今のはカットボール投げようとしてたのか」

「あったりー、よく分かったね。カットボール投げられたら格好良くない? と思って習得しようとしてる、その練習に付き合って欲しかったのでー、す!!」

「ッフン!! ん、今のはちょっとボール気味だな、もちょっと思い切り投げてみろー」

「うっす!! きちんと真芯で捉えられたのがとても悔しい。
山本〜、ちょっと握り方見てくれない?」

「お、いいぜー!! ……ザビ子が得意なのはフォークだろ、カットはそれに近い握り方で……」

「ふむふむ、こう?」

「そうそう!! んで、人差し指と中指は離す」

「ふむふむ、ナルホド」

「よし、その握り方だ!!
────よし、ちょっとそのままで投げてみろ、思いっきり投げるんだ!!」

「おう!! ピースサインの要領で……思いっきり、投げる!!!!」

「っ!? くァー!!!! スッゲーな!! 今の当たっても詰まるぞ!!」

「ピッチャーゴロ。やったー、カットボールをモノにしたぞー!! サンキュー山本、やっぱ持つべきは野球馬鹿だわ」

「おう、良いって良いって。それよりザビ子ストレートマックス何キロだ?」

「ん? 最近は測ってないから分かんないけど、一ヶ月前ぐらいにたまたま測ってみたら140出た」

「140キロ!!?? おま、バケモノかよ!!??」

「ほほーん、それは褒め言葉として受け取っとくわ。それ測ってくれた野球部の監督から『ザビ子くんが男の子だったらウチにスカウトしたのに』って言われたさー。
ストレートだけは誰にも負けない、誰よりも速い珠を投げる自信がある、だから私は野球をやってんだよ」

「ザビ子……」

「すきありーー!!!!」

「げえ!! ちょ、不意打ちだろ今の!! 狡いぞー!! スポーツマンシップに則れよ!!」

「ストラック!! いやー、私は野球をやってるだけで野球選手じゃないからっねー!!」

「フッ……!! っだー!! 空振ったか!!」

「ストラッツー!! あとワンアウだよー」

「おまえに、あんま俺をナメんなよー?」

「なん、だと?」

「名スラッガーは、ここぞって時に打つんだぜ!!」

「────ほほう、気合が入ったな山本……なら、私も全力で行かせてもらおうか!!!!」

「バッチコーーーーイ!!!!」

「あれそれ野手が私に言うんじゃないの!?」

「細かい事は良いんだよ、気合入ったろ!」

「まぁね。よーし、全身全霊のストレートお見舞いしてやるからな!! 吠え面かきやがれー!!」

「おっしゃー!!」

「ぬう!? あぶね!!」

「ぐわーーーー!!!! ちくしょー、やっぱ速えなザビ子のストレート!!」

「ストラッスリー、バッターアウッ!! 悔しがってるわりには、山本超笑顔なんですけど」

「ん? そりゃそうだろ、こんな速い珠を俺に投げてくれるなんて、お前ぐらいなもんだぜ!!
こんな凄い投手が、こんな近くに居るなんて、野球やってて良かった。
打者冥利に尽きるってもんだ!!」

「ふふん、なかなかに嬉しい事を言ってくるなぁ山本。愛すべき野球馬鹿だなー。
よしよし。山本、このままキャッチボールしようぜ」

「おう、いいぜ! グローブグローブ……よし、行くか。俺から投げてもいいよな?」

「さー、しまってこーぜ!!」

「ほいっ!」

「む……っ、なかなかイイ肩してんな、お前オールラウンダーだよなホント……どっせい」

「とと、おいザビ子軸ブレ始めてるぞ、もっとスタミナつけろー」

「無茶言うな、女子と男子の体力差が如実に出る中学生時期なんだぞー。
最大ストレートも投げられて、三球までだし。それ以上は肩壊すぐらいだーって」

「なら、尚の事鍛えろよー。
あ、そういや同じ野球部の里中居るだろ、アイツお前の事好きだって言ってたなー」

「へーえ、誰だか知らないけど危篤だな。
あ、そういや隣のクラスの村田さんが、山本の事好きだって言ってたわー」

「へー、そうか」

「へーて反応薄いなー、中学生にとって惚れたはれたは一大事だろ」

「ザビ子も同じ様な反応とってたろーっと」

「言われてみれば。まあ、私には野球があるし、そんなのに割く時間ないし暇もないし。
────────山本、お前は?」

「俺もザビ子と同意見。今は野球が楽しいし、野球してたいしな」

「そっかー。じゃあしばらくはまだお前と野球出来んのかー」

「そうなるなー、ここで突然のフォークボール!!!!」

「ぐぼ!! あぶ、あぶねぇ!!  取り損なうトコだったじゃん!!」

「ははっ、わりーわりー!! なぁ、ザビ子ー、楽しいな〜」

「ん? おぉ、楽しいわな。よし、ストレートを受けてみよ」

「おっしゃ!!」














































野球馬鹿と野球馬鹿

一生掛けても手に入らないダチ公に出会えた、野球って素晴らしい!!




































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