星屑の煌めき




(無双/Empires)それは娼婦の畜生胎につき




「あー、楽して天下取りたい〜」

「無茶ですね」

「そこをなんとかしてよぉ、優秀な軍師殿ぉ」

「仮にもこの国の君主であらせらる君がこの有様では、なんとも難しいですね」

「うっわ、ひっど! 徐庶じょしょさんたらひっどー!! わたしだってね、ない頭捻り出して色々考えてるよー?
施しをしたり、鍛錬したり、外交考えたり、同盟結んだり、それなりに私頑張ってますよ?」

「それでも、あの曹操そうそう軍には適わぬと思ったから袁紹えんしょう軍との同盟を締結したんですよね」

「ええ全く以てその通りですよ陸遜りくそん、言い返せないですよぉー。
後顧の憂いを断っとかないと、目前の曹魏・孫呉と渡り合えないしねぇ」

「……俺としては大国ばかりに目を向けずに、隣国の憂いも断っておいて欲しかったですけどね」

「ぁ……ぅ……その、ごめんなさい…………流石にこうも連続して襲撃が来るとは予測してなかったもんで……。
あちらさんは金も兵力も兵糧も有り余ってるのかしらねー、羨ましいったらないですよね、陸遜」

「そうですね。おそらく我らを疲弊させる算段のようですね、こちらからは討って出れないという事を把握しているんでしょう」

「民兵を小出しにして防衛させてはいるから、しばらくは保つと思うんだ、その辺軍師殿徐 庶はどう思う?」

「度重なる防衛戦で兵士は勿論民も疲労・不満が溜まっているみたいです、噂ではいつ一揆が起きても可笑しくはないと」

「一揆かぁ……まあ、この地は最近略奪した所だから、民草としてはわたし達は侵略者でしかない訳だし。
一揆が起きても致し方ない、が、そうなれば更に苦しむのは自分達だって気付かないのかねぇ、民衆は」

「無論気付いているでしょう、ですが現状よりはマシだと思っているのやもしれません。
私としては、そろそろ反撃を仕掛けても良い頃合いかと思いますが、ザビ子殿」

「それなんだよねぇ、こっから一転して侵攻してみるってのも手だとは思うんだけど、なにせ危険が高い。
わたしとしては、今は富国強兵を計り、民の心を落ち着かせるのが良いと思ってるんだ」

「あの、ちょっと良いですか。俺の話を聞いてもらえませんか?」

「なんですか、徐庶殿?」

「徐庶、なにか妙案が?」

「俺としては陸遜殿の意見に同意ですかね。
度重なる防衛戦でこちらは疲労困憊だ、ですが逆にそれは向こうの国にも言えた事ではないですか?
攻めても攻めても攻めきれない、向こうは全力でこちらを潰しに来ている、疲れが溜まらない訳がない。
ならそこを巧妙に衝けばいい、狙い目としては次の防衛戦後です、疲れで動けないであろう所を叩けば早く事が終わるんじゃないかと思うんですが……」

「ふむ、成る程……敵の攻めを逆手に取る訳ですね、徐庶殿」

「そうなる、かな、俺としては少し後味の悪い策だが……」

「いや、それ良いよ、かなり良い策だ…………向こうだって人間だ、幾ら襲撃をかけても落ちない土地、身も心も疲れ果ててきている」

「ではザビ子殿、この方針を採用なさるのですか?」

「陸遜はなにかある?」

「いえ、私の方からは特になにも。私も徐庶殿の策に賛成です」

「そうか。ならばわたしは2人の意見を信じよう。
次、攻めてきたらあの国は終わりだな、領土拡大か、楽しくなってきたな」

「俺としては、戦に出て剣を振るうのは遠慮したいのですが……」

「ダメダメ、今我が軍にはわたし、徐庶、陸遜の三人しか武将いないんだから。
兵力もそこそこあるんだから、いくら軍師といっても戦場に出て直接指揮を執ってもらいますー」

「……徐庶殿、諦めて下さい。ザビ子殿はこういう方なので慣れた方が身の為ですよ」

「ちょ、陸遜それ酷くない!?」

「……郷に入っては、て事かな。俺が前に所属していた国とはあまりにも、違いすぎて、慣れるには少し時間がかかりそうだ」

「徐庶も便乗して攻撃しないでよ!? やだ我が軍は四面楚歌ー!!」

「とりあえず陸遜殿、俺は次の戦に火計を推奨するよ」

「奇遇ですね徐庶殿。私も火計を推そうかと思っていた所です」

「うおぉぉぉい!! そこの腹黒大都督と腹黒軍師、君主を無視して新たなる軍議を開くな、しかも内容末恐ろしいわ!!」

「良いじゃないですかザビ子殿。あなたも何だかんだで火計大好きじゃないですか。
拠点火計のみならず、大火計、火矢斉射も選んでますし」

「陸遜その爽やかな笑顔でさらっと怖い事言わないで欲しいンですが。
いや、その通り絶招秘計は大体それだけどね」

「俺としては大火計だけは勘弁して頂きたいですね、戦の度火炙りになるのはちょっと……」

「ぅ……ごめんなさい……でも、陸遜が進めてくるんだもん、文句は陸遜にまで」

「責任を擦り付けないで下さいザビ子殿。私はあなたの義兄弟として当然の策を推奨しているだけですよ?」

「当然なのかな、ねえそれ義兄弟としてってあんま関係なくない?
軍師殿、次は大火計をしないように気をつけます、だからわたしを裏切らないでね、ね?」

「……裏切るもなにも、俺は君を裏切るつもりなど、毛頭ありませんよ」

「ホント〜? とか言って、絆された所を裏切ったりしない?
徐庶、頭良いから有効的かつ合理的に人を追い詰めていく事、上手そうだからな〜」

「ザビ子殿は俺を信用していないんですか? それはそれで俺に対する“裏切り”じゃないんですか、君主殿?」

「いやだな、わたしは徐庶を信じてるよー?
でもそうやってさ、こっちが完全に信じ切った所を裏切ったら、それはそれは大打撃になるじゃない?
国崩しには持って来い、な策ではありませんかー」

「ザビ子殿、それはあまりにも徐庶殿を侮辱し過ぎでは……っ」

「いや、いいよ陸遜殿。仕官したての人間を疑うのは君主として当たり前だ。
埋伏の毒、という策があるだろう。それを疑って如かずだ」

「徐庶殿……」

「俺はまだこの国に降って日も浅い、ましてや敵国にいた身だ、訝しんでもおかしくはないさ。
ザビ子殿は君主として当然の勤めをしたまで、ですよね」

「ん。まあ、わたしの場合は家臣に裏切られた前科があるから、ね、陸遜」

「え……?」

「徐庶殿、この国、何故我らしかいないか考えた事はありませんか?」

「……確かに。それなりに領土もあるのに家臣が圧倒的に少ないとは考えたが、まさか……」

陸遜こやつ以外、家臣全員一族諸とも処刑した。それこそ根絶やしにしたと言っても過言ではない。
君主わたしを裏切るとは、決して赦されん行為だろう。裏切り者にはそれ相応の処断を下さねばならん。
故に、この国の君主わ  た  しは暴君と呼ばれている。

────だからね、徐庶。わたしの事、裏切らないで、ね?
わたし、まだ徐庶の事殺したくないんだからさ」

「裏切りませんよ、俺に利益ないじゃないですか」

「だそうです。良かったですねザビ子殿」

「よーし、じゃあ今日は親睦を兼ねて朝まで飲み明かすぞー!!」

「この国が常に財政難に悩まされている理由が少し分かった気がするよ……」

「……徐庶殿、本当の苦労はこれからですよ」

「飲むぞー!! 二人共早く、街へ行くぞー!!」

「ザビ子殿、酒が好きな割に下戸なんで帰りが大変なんですよ」

「……俺はなんて国に仕官してしまったんだろう」






















































仄かに甘い毒に犯されていく。

内側からこの国を壊すつもりだったんだが、この国は疾うに壊れていた。
危うい均衡を保っているか細い双肩を、支えていきたいなんて思い始めてしまった自分がいる。

──壊すつもりで、壊されたのは俺の方だったのか──































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