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極楽蝶華

 
 



バタバタバタバタ


ガラァッ!!




「……あれ、本田。どーしたんだよ便所行ってそんな息切らして。」


「……が、……てた……」


「何。聞こえねぇーって。」


「……シおが、……ッいてた!!」


「は??」




「獅子緒さんが……そこでッ……泣いてた……ッ!!」




息も切れ切れにそうとだけ告げて肩を上下させる。



そう。先ほど廊下で悠紀仁と圭介のキスシーンに遭遇した彼である。




「……また何やったんだろうねあの人……」

「今度は犠牲者誰だろ。」


関心が無い、と言った風に各々雑誌やらケータイに視線を戻した。



「俺こないだ獅子緒さんが3人纏めて2階から放り出して涙出るほど大笑いしてんの見たよ。」

「俺が見たのは廊下のアンティーク時計相手の口にぶち込んでその上から殴ってるトコだったなぁ。」

「ああ、田宮のやつ?」

「あれ奥歯5本イカレたんだってさ。」


「まぁ、あんだけ血ぃ出てればなぁ……」

「てゆーかあの人、人殴りながら泣くほど笑えるのが凄いよね。」

「あーな。」


「なぁー、これから坂本の部屋でゲームやっけど本田も来るだろ?」




「……違う……」




やっと呼吸が正常に戻り、途端恐ろしいものを見たかの様に無表情を顔に張り付かせてぽつりぽつりと話し出した。


「……あの、ユウちゃんいるじゃん。スゲェ可愛い子。」

「あぁ。……ってもしかして被害者ユウちゃん?!」

「うっわ……何、ヤッてる現場見ちまったの?!」

「ユウちゃんの●●●涙出るほど気持ちイイのかよ獅子緒さんいいなぁっ!!」




圭介の認識はこんなもんだ。



「……違う……」




「え……じゃあ、何?」









「そのユウちゃんに……えと、獅子緒さんが……抱き着いて、
【嫌いにならないで】
って……超泣いてた……」











「ま……また、お前……見間違いじゃねぇの?」

「嘘……うん。そうだよ。嘘着くならもっとまともなの……。」














「……まさかホントなのか?」





無表情のまま固まった友人に、心持ち声が震えながら一人が話し掛けた。




ぎこちなく振り下ろされた頭





しばしの沈黙





皆が皆、先ほど青年本田が言ったことをビジュアル化しようとして顔を引き攣らせていた。

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