極楽蝶華
2
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……何やってんだ、俺。
腕なんか使えなくても脚技使えば、逃げられるかもしれないのに。
もともと腕力は無いけど、……っ、なんで抵抗しないんだ??
男相手のキス、でなんでか腰砕けて……、挙げ句、……立てない。もう逃げられないし……っ。
久遠先輩と自分の口から、唾液が糸を引いてるのを見て……
……なんだかよくわかんないけど、涙が出た。
恥ずかしい、とか情けない、とかそんな感情がぐちゃぐちゃになって俺から溢れ出して。
覗き込まれた顔に、一層熱が集まるのが嫌な位分かった。
『……っ、』
思わず……目を背けて……しまった。
だって……同性に、キス…されて……気持ちいいとか、思って…
あんな声上げて……泣き顔まで、見られて。
顔なんか合わせられない。
何で、何で俺あんな……
手の甲でぐりぐり目を擦っていると、ふぃに顔を両手で挟まれて持ち上げられて瞳を覗きこまれた。
「……ごめんね……」
茶色のビー玉みたいな瞳が真っすぐこちらを見つめている。
「……いきなり…こんな………君に、……」
綺麗な顔はすごい困った様な表情をして、俺を覗き込んできてて。
「…嫌だった、よね…ごめん……」
久遠先輩のほうが狼狽してて、今にも泣きそうで。
おろおろと、頬に付いた俺の涙の跡を指でなぞり…整った顔に苦痛を浮かべてただひたすら困窮していた。
…そんな顔をされると、…こっちが困っちゃうじゃん…
まるで、悪いことをしたようなばつが悪い気持ち。
『……び、びっくりした、だけですか…ら…
そんな顔……しないでください……。』
「…本当に?」
伏せていた顔が上がった。
少し寄って来ている……
『……っ、びっくりして……あと、ちょっと恐く、て…たぶん、それだけ…です。』
体を離そうと身を退いた瞬間、久先輩遠に抱き寄せられた。
「…よかった……」
耳元で安堵の溜め息がきこえてきた。
吐き出された息が首筋にかかり、少しくすぐったくて。
……何故か、気恥ずかしくなった。
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