極楽蝶華
2
『あー……ね、レオ。俺の席分かるよな?』
「うん。」
『カツラ被るの面倒だからレオ鞄取って来てくんない?』
「いいよ。待ってて。」
俺の教室のある階の談話室から、レオを見送った。
と、俺の教室に入る前に急に振り返る。
「ユウ、そこ動かないでよ。」
ちっちゃい子供か俺は。
『へーへー。』
ケータイが無いので手持ち無沙汰に握った手をぱたぱたと振った。
てか、もう授業終わってる筈なのにやけに人多いなぁ……
と、じろじろと視線を送って来る周辺に意識をやった。
【うわっ……ユウちゃん可愛い〜〜vv】
【仕種ヤバイッ……萌。】
【ちょっと拗ねてるぽい表情マジHitなんですけど】
【ね……こっち見てこっち!】
小声なので喋ってる内容までは解らないが、俺を指差してこちらを見ながら喋ってるので俺の事……であるのは明らかだ。
すんげぇムカつくぉ。
(#´・ω・`)ヌッ殺スゾテメェラ
学校や親は
【見た目で人を判断しちゃいけません】
て教えてくれなかったのか?
ちょっと髪と目の色が人と違うだけだろ。それをあからさまに……言うことじゃねぇじゃん。
……俺は結構気に入ってんだけどなぁ……
しょんぼりうなだれてると周りの反応が一層ヒートアップした。
ダガァァンッ!!
「散れ!!テメェラァッ!!」
思い切り踵で打たれた教室の壁がビリビリ鳴って、欄間に嵌められたガラスがガタガタと揺れた。
「ウゼェーんだよ……死ね。」
周囲に一瞥をくれて、こちらに歩いてくる。
「ユウ、平気?
一人ずつ殴ろうか?」
俺の頬に自分の掌を宛がって、ゆっくりと動かす。
『だいじょぶだよ。ちょっと落ち込んだだけだから。』
「……何言われたの?」
ふ、とレオが周りを見る。
「テメェら……ユウに、何言った?あ?」
明らか怯えながら後ずさる周り。
『いや……聞こえなかったから別にいいよ。
それより俺腹減っちゃったからさぁ。行こーよもう。』
くいくいとレオのワイシャツの裾を引っ張って促した。
「……ユウが良いなら……。」
やっと威嚇するのをやめてこちらを向く。
『ん。行こ。』
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