極楽蝶華
なんかほのぼの
「うーん。でもさ、傷っつってもすっかり乾いちゃったよね。」
……そうなのだ。これじゃあ消毒しても意味が無い。
「悠紀仁の気持ちだけもらっとくからさ。」
『あぁ……ほんとありがとうございました。』
「じゃあ俺、留学復帰早々さぼっちまったから……せめてHRくらい出とくわ。
なんかあったら連絡しろよ。」
自分のケータイを振りながら猛さんが言った。
そうそう。さっきアド交換したのだ。
『うーぃ。分かりました。
……っあ、猛さん!!』
もう歩きだしていた猛が向こうで振り向いた。
「なんだ?」
『俺は、絶対猛さんのこと間違えませんからね!!
――どんな格好してても。』
「ありがとな。」
廊下の向こうで猛さんはちょっと泣きそうな顔をしていた。
今度は、少し照れながら……かな。
俺もなんか少し嬉しくなった。
さぁーて。
一年の校舎は……今窓から見えるアレ(城?)か。
こっから裏側突っ切っちゃった方が早いな。
てゆーかダメだ俺は目標物が視認出来る範囲にあるうちにどうにかしとかなきゃ。
階段登ったりしたら絶対方角やら分からなくなって泣きを見るんだから。
(←悲しいが確信。)
窓を開けて外に降りた。
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