[携帯モード] [URL送信]

極楽蝶華

 

「何って……薔薇の茂みに手ェ突っ込んだら傷だらけになっちまうだろ。」

突っ込まなきゃ取れないぢゃないですか。



『そん中に落としモノしたんですよ。』

「あぁ……なんだ。取ってやるよ。」



覗き込んでから、ためらい無しに手を伸ばすこの人を急いで止める。



『えっ。ちょっと何してるんですか。』

「……拾うんだろ?」

『今自分で【傷だらけになる】って言ったじゃないですか。…怪我しますよ?』


「いいんだよ、別に。」


いやいやいやいや。

『良く無いです。今日初めて会った人にそんな迷惑かけられません。』


清く正しい不良は礼儀に厳しいんだぞ。

「……うーん。……俺がやりたいから、いいんだよ。別に。」

そう言って茂みの中に頭から入って俺のカツラを取ってくれた。

「はい。」


幾つか付いてきた葉っぱをぽんぽん、とはたき落として返してくれる。

『……ありがとうございます……でも、ほんと……』

「や、蹴り込んじゃったの俺だし。
……イライラしててさ。ごめんな?」


そう言ってくれてるが、半袖から出た腕には所々真一文字に赤が走っている。


『……確かHR棟に保健室がありましたよね。』

「あぁ。」

『連れてってもらえますか?せめて傷の消毒くらいやらせてください。』

「いや、それは嬉しいけど……連れてく、って言うのは?」

『俺迷子なんです。』


  壮大に笑われた。

別にいいじゃーん。ぶー。

[*前へ][次へ#]

93/99ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!