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極楽蝶華

 

「……じゃあ引っ張り上げてやるから、目ェ瞑ってろ。刺で傷が付くぞ。」


『お願いしまーす。』

目をきつく閉じると後ろから腹に手を回されて抱え上げられた。

自分のウェイトはわかっちゃいるがここまて軽々とやられるとやっぱり悲しい……


『どうもありがとうございました。わざわざ。』

俺の事薔薇の中に蹴り込んだのはあんただろうけどな。


……別に望んじゃいなかったが返事くらいしろよ。

こいつも人の顔じろじろ見やがって。


ふと自分が突っ込んだ茂みが気になって後ろを見た。


『……あー、やっぱり幾つか枝が折れちゃってる。』


わざわざ引っ張り上げてもらったのになー。


『花も二つ散っちゃって……』


その向こうに見えるのは

可愛そうに薔薇の刺に絡まれた


俺のヅラ。


眼鏡は足元に落ちてるぉ…


わーお。昨日から合計で8人に素顔バレてんじゃん。いよいよ問題起こしにくくなってきたな。

とりあえず何事もなかった風を装って眼鏡を拾って胸に差して、
薔薇の中に腕を突っ込んで可愛そうなヅラの救出にかかった。


「何やってんだよ。」


ら また後ろから軽々と持ち上げられて。

蹴りに威力付けるために鍛えてるのになー……

……これでも。


軽く自尊心を傷つけられて後ろを仰ぎ見る。


『あにすんですかもぅ。』

何すんだ、はこっちの台詞だ。


胸の辺りに手を回されて持ち上げられてるのに、足が付かないというのが何とも悲しい……

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