極楽蝶華
カウント
「……春日、お前はいつから?」
「は?つか何の……」
ふ、と何かに気付いたらしく不動が何かを指折り数え始めた。
「……悠紀仁が来た次の日だから……今日で2週間と4日。会長達は?」
「……俺は丁度2週間。」
「俺もそんくらい。」
何をカウントしてるお前ら。
「へぇ……ヤッてるか喧嘩してるかの奴らが随分変わったね。
右手のお世話になるのは何年振り?」
奈緒が面白そうに茶々を入れた。
「……ッつーか報われる日は果たして来るんでしょうかねぇ。」
「まぁ……あの超ド級に鈍感なお姫様じゃなぁ……」
一同自虐的な笑み。
「……世の中の男でさ、20歳過ぎても童貞、とかいるじゃん。アレってどうやって我慢すんかな。」
「……ちょっと聞きたいな。俺も。
最近理性飛びそうになるんだよね時々。」
世の中の男が聞いたらそれこそ怒られそうな台詞だ。
君達は解らないかもしれないけどその多くは不可抗力なんだよ。
……だってさぁ、寿司食べたことないヤツが「寿司なしで生きていけない」とか言わないじゃん。
「……僕も折角女遊びやめたのになぁー。
その辺の苦労分かってくれないんだろうな、悠紀仁は。」
ふぅ、と細く息を吐いて入力の終わった書類を揃える奈緒。
「……俺なんかセフレと別れ話の時刺されそうになったのに……」
「刺されればよかったのに……」
「あ?なんか言ったか?春日。」
「いーえ別に。それよりカイチョ、早くその書類こっちに渡して下さい。今入力してるヤツの続きなんですよ。」
「ちょっと待て今記入欄埋めてるか……」
ぴた、と万年筆を走らせる手が止まる俊。
「インク切れた。
……春日、新しい瓶取ってこい。」
「……自分で行けよ……。」
そう言いつつも横柄な発言には慣れてるらしく腰を上げて奥の部屋に行く。
物置と化している資料室、だ。
「あー、カイチョ、インク換えありませんよ。切れてる。」
開いた扉の奥からガタガタ、という物音と共に声が聞こえて来た。
「……マジかよ。あぁ……ツイてねぇ。」
ごろん、と高そうなモンブランを机に投げ出しめんどくさそうに上を仰ぎ見、大仰そうに息を吐きだした。
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