極楽蝶華
2
怯える小動物をシーツで包んだままゆっくりと湯槽の中にすべり込ませた。
いくら話し掛けても放心状態がいつまでたっても抜けない。しかたないが少々荒っぽい手に出よう。
これ以上はいくらなんでも手ェ出していい範囲じゃない、チワワの方だって知らない奴に体とか洗われたら好い気はしないだろうし。
ので肩を掴んでガクガク揺らした。
「……わ、っ……何っ、」
やっと起きたか小動物。
こーしてみるとやっぱりハムスターかなんかっぽい。
まったく。小動物はストレスで吐いたりハゲたりするんだぞ?ペットの胃潰瘍とか問題になってるじゃないか。
もうちょっと優しく扱ってやれよ不動。
覚醒したためか、警戒心丸出しでこちらを睨んできた。
『……起きた?』
「……何で、今……お前がこんなとこに居るんだよ。何でこんな事するんだよ……。」
『……忘れてるかもしれないけど、ここ、俺の部屋でもあるんだよね。別に理由トカ知らねぇし知りてぇとも思わないケド、目の前にガタガタ震えてる奴がいたら何とかしてやるのが普通だろ。』
眼鏡曇って見えにくい。
『石鹸そこ、タオルあそこ。お前が着てたらしい服は今洗濯機の中。出てすぐのテーブルの上には袖通してない服。
一揃い置いといたから良かったら使え。』
「……何が目的だよ……」
訝しげな顔でこっちを見てきた。
まぁ今の俺みたいな外見の奴に助けられたらこんな感じか。
イヤーン俺ってば今親切の代わりに身体でも要求しそうに見える?
『…別に俺は何もしてねぇよ…つかする気も無いから安心しろ。俺ノーマルだし。言っただろ?昨日。』
一つ息をついて立ち上がった。
『軽口叩けるなら平気だな。俺ちょっと用あるからもう出るけどお前も遅刻しないようにな。』
風呂場を出ていこうとすると再度……後ろから呼び止められた。
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