極楽蝶華
何して欲しい?
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しばらく、涙ぐんだ悠紀仁の荒い呼吸だけが車内に響いていた。
「悠紀仁……何があった?」
『ほっとけ悠紀仁。
……で、なんでもしてやるから、もっかい言って?』
何してほしいんだ?
でも……してやんぜ?何でも。
もじもじした後、顔を赤くして俯きながら呟きだした。
「……野村に、何か変な薬飲まされて……」
涼凰寺が眉を吊り上げた。
「体中、なんか……うずうずして、さっ……き、ケータイ震えて……
……我慢できなくて……」
俺の腕の中で、身体が強張るのが分かった。
『……何すればいい?』
「それで……」
「俺の胸ポケットの中のケータイ、出して……って。」
でも、もう止まったから平気。って……
……またそんなうまい話がある訳無いか。
車が走り出した。
「あ……のさ、俊。」
『何?』
「さっき……邪魔してゴメン。」
言ってすぐ、赤い顔を伏せる。
…………!!忘れてた!!
『いや、アレ違う違う。
俺同意してないし乗り気じゃ無かったし無理矢理キスされてたから。』
「くっ……詳しく教えろなんて言ってねぇーよっ!!」
顔を真っ赤にして怒ってくる、俺の本命。
本気なのに。
俺、お前の事は本気なのに。勘違いなんてされてたまるか。
初恋だなんて知らねぇだろ、大分前からお前の事しか見えないのに。
『や、だから違「オラ着いたぞ。」』
……オイ。わざとだろ貴様。
思えば若干一名邪魔な奴もいるし、部屋に行ってから話をしよう。
……そーいえば、俺まだこいつに
『嘘ついてゴメン』
っつってねぇーわ。
悠紀仁を抱いたまま車高の低いスポーツカーから降りて、寮に入った。
『これ、工具ねーと無理そうだぞ。
下手に壊したら悠紀仁の腕も傷つくし。』
これ、と言いながら悠紀仁の背中側で固定された大仰な枷を涼皇寺に見せた。
「あー……だな。ちょっと待ってろ。熊さん呼んでくるから。」
……誰が待つか。
悠紀仁の足を支えてる方の手を伸ばして、専用機に乗り込んでカードを通して扉を閉める。
閉まり切る前に、涼凰寺の血相抱えた表情が見えた。
ザマ見ろ。
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