極楽蝶華
キューピーのアレ
俊に抱かれて移動する間も、俺は一つの事と戦っていた。
はい、下半身ね。
薬は効き目が切れるどころかむしろ効果が素敵に持続してるし後ろに入ってるやつはスイッチも入りっぱなしだし
俺のジュニアは完全に勃っちゃってますがイケないし。
身体は過敏になってて、衣擦れの度に声を漏らさない様にするだけで精一杯ですが何か。
車に乗り込んだら乗り込んだで、今度は微妙な振動が腰に来てやがんだよコノヤロウ。
俊が抱いたまま車に乗り込んだので、膝の上で懸命に唇噛んで声を殺して。
恐怖の余韻と、まだ残ってる薬の我慢で
身体がぶるぶる震えた。
それを抱きしめてくれる腕が、心地良くて……少しずつ落ち着いていく。
まだ涙は止まらないけど、耳元で囁かれる
「大丈夫」に
無条件降伏しておいた。
で、こんなときに限って
―テンテレテロリロテッテッテーン―
メールが来て、着信に設定してある【三分間クッキング】のテーマが流れたり。
当然さ、震えるんだよ。メロディに合わせて。
『ひっ……や、や、やぁっ……ぁ、ん、……〜〜っ!!』
いやいやちょっと今の俺にこの刺激は駄目だろ駄目……
『や、やぁぁぁあっ……ひぅ、ぁっ……あ……』
俺の声にびっくりしたらしいりょーちゃんが、歩道脇の縁石に乗り上げて車がガクン、と跳ねた。
「……にしてんだ琉崎ぃぃいいっ!!」
凄い形相で振り返り、俺の頭の上……俊の顔がある辺りをキツク睨みつけた。
俊は俺を見たまま、動かない。
『ひっ……ぐる、俊、俺の……中……ぁ、……して?はやく、あっ……』
まだ震えるケータイに耐えながら、腕の使えない俺は俊に頼んだ。
呂律も回らない上に腰も砕けてるから、何言ってるか自分でもわかんない。
二人の動きが止まった。
ついでにケータイも。
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