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極楽蝶華
助かった……
 


『……っ、うぁ、くぅ……っ、……』



やっと何とか息が出来る様になると、俊が俺の背中を見て呟いた。



「……枷、鍵かかってる。寮行くぞ。」




まだ酸欠気味だった俺は、何も考えられずにされるがまま、頷くしかなかった。



「待っ……てよ俊様!」




ぼんやりと麻痺した頭に少し高めの声が響いた。




二人が何か言い争いをしているのを半ば飛びかけた意識で聞きながら……張り詰めた緊張感が切れたせいで意識が遠のいて行った。










「……オーイーコーラーそこの馬鹿!!」


「……んだよ。」



廊下に響き渡るりょーちゃんの声に目が覚めた。




「とーとー理性ぷっつんしたか??あ?
こりゃどー見ても同意の上での行為じゃねぇよなぁ……?」




『……俊、と、りょーちゃん?』



睨み合ってる二人に声をかけた。


「起きたか。悠紀仁。」


垂れ下がる前髪越しに、黒曜石が覗き込む。


「……悠紀仁。この馬鹿に何された。正直に言え。」


こめかみに青筋が浮かんでいるりょーちゃん。



『俊……は、助けてくれたんだよ?』


「……そーゆー事。今から寮帰って腕の鍵外してやんなきゃ。」




俊が俺を持ち上げて、背中をりょーちゃんの方に見せた。



「……誰にやられた?」


『……世界史、の……野村……眼鏡かけてる。』



「?!……あのヤロォ!!」




いきなり大声を上げるりょーちゃん。



「……何かあんの?」


「アイツ前から俺に言い寄って来てて……最近静かになったと思ったらぁぁっ!!」



「……コイツに趣旨替えした、って訳か……」


心なしか、俺を抱える手に力が篭った。




「とりあえず、俺が寮まで車で送る。そのままじゃ二人とも目立ちすぎだ。」





確かに、歩けないから不可抗力だがお姫様抱っこはいかがなものですかね。





りょーちゃんを睨んだ俊が、俺を下に下ろしてワイシャツを脱ぎ出した。


それを俺にかけて、もう一度抱き上げる。 

Tシャツ越しでも分かる筋肉に、ちょっと嫉妬。


……逞しいなオイ。





「……見るな。減る。」


「ケチ。」



何が。

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