極楽蝶華
逃
『…………ひぅっ!?』
足首が掴まれて、引っ張られた。
ずるずると引きずられる。
無我夢中で、引っ張られる方向に向かって踵蹴りを放った。
小さく呻く声が聞こえて、足首を掴む手が緩む。
前のめりになりながら、今度は何とか廊下に出られた。
――このままココにいちゃいけない――
本能で恐怖を感じて、自分の恰好も構わず壁伝いに肩をもたれかけ、ズルズルと膝立ちで移動した。
腰も、膝も、精神的にも、自分の足で歩ける様な状況じゃ無かったが……
逃げるしか無かった。
あの、野村が追ってくる前に、とりあえず誰か見付けないと……
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