極楽蝶華
嘘付いて
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待っている間はイライラしっぱなしだった。
―ガチャッ―
横に村上の控える扉から出て来た久遠先輩。……顔ニヤケてる。クソむかつく。
「あ、ヤバイ。可愛スギ。」
ぶつぶつ何か言っているし。
幸せそうだし。
あーもー……ウゼェ。
「テメェ……何してやがった」
「悠紀仁の可愛さにメロメロになってた。
手は出してないよ。かなり我慢したから。」
あー、でも可愛かったなぁ、とか言っているその顔が幸せそうで……やっぱ凄いムカついた。
『……それで、許してくれたんすか。』
「……うん……悠紀仁、怒ってるんじゃなくて傷付いてたよ。」
傷付いてる
その言葉にギュル、と胸が痛んだ。
『俺、次。』
言うより早く立ち上がって走り出して
背後に迫る足音に構わず、ドアのノブを掴んで勢いのまま中に飛び込んだ。
急いで閉めた扉に、乱暴なノックが響く
音に驚いて、悠紀仁が顔を上げた。
その目は潤んでいて真っ赤で
「……不動……」
急いた気に、足早に近付いて飛び付くように隣に座った
高級な革張りが少し沈んで、悠紀仁が少し身構える。
『悠紀仁……』
隣にいる華奢な身体を抱きしめた。
薄い肩は震えてて、俺は、このまま手を背中に回していいのか少しためらった。
怯えさせたのは、俺なのに。
『嘘ついて、ゴメン。』
肩に顔を埋めて、それだけ呟いた。
シャツの裾が引っ張られる感触に、悠紀仁が触れてきてくれたのを感じて泣きそうになった。
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