極楽蝶華 おどろ木桃の木 ……いきなりのことで変な声を出してしまった。 しかも大声で。 その所為だろうか。まわりが騒めいている。 『……俺…僕、は…悠紀仁…っていいますけど……』 その男は肩を落として、目に見えてがっかりした表情を見せた。 「いや、いいんだ。人違い……だったようだ。 すまない、こんなに若いはず、ないのに。」 あまりの落胆ぶりに、 俺は、 後々後悔する一言を言ってしまう。 『悠臣は…僕の父ですが……ご存じなんですか?』 男の人の顔付きが変わった。 俺の肩を掴んで、真正面から目を見据えて真剣な眼差しで問い掛けてくる。 「君は…悠臣の息子か?……っ、確かに似てる、が…君の名前は?!どんな字を書くんだ?!」 気押されて、疑問詞を口に出すことさえ考えず思わず答えていた。 『……藤堂悠紀仁(トウドウユキヒト)……こちらと同じ藤堂、に悠久の悠、世紀の紀、仁で、悠紀仁です……』 言い終わって、 ……相手がいきなり抱きついてきた。 『?!!ちょっ……すいません……!!』 やっと離れたかと思うと、腕を掴まれて引きずられるように連れていかれる。 ……どこに行くの? [*前へ][次へ#] [戻る] |