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極楽蝶華

 


この近辺にある藤堂グループ関連の会社はここしかないから、おそらく間違ってない、とは……思うが‥‥

ナル(迷子の男の子。さっき名乗ったので愛称で呼んでいる)も父親に連れられ来たことがあるらしい。やはり、ここでいいのか。
それにしても本社かよ。……敷居高ぇな。


高級なエントランスに委縮しつつも、俺はとりあえず受け付けに向かった。

『すいません』

顔を上げた受け付け嬢が驚いたように目を見張る。こちらをジロジロ見てくるが……やっぱ制服は目立つ?よな。オフィス街じゃ。


「…………。」


『あの、スイマセン。ちょっといいですか?』


「えっ?
……あ、は、はい!!」



……あと、やっぱ俺のこの髪の色だろうなぁ。
珍しいからな、銀色なんて。



『この子、父親に会いに来たんだって言うんだけど、内線繋げていただけますか?』



ナルを胸まで持ち上げて愛想良く頼んでみた。アポがどうのこうの、とは言われないだろうがまさか不審者にはされないだろうな。


天使のようなナルを見てお姉さん方も顔がゆるんだ。
俺はその様子にそっと胸を撫で下ろす。

「お名前は?」


「Steeb-T-Rolence」


 お父さんの方だよ、と俺が言うとナルは恥ずかしそうに頬を少し染めて俯いた。

うんうん。微笑ましい。


「Haruki-Todo」

ナルがそう言うと受け付けがびっくりしたような顔をして、眉根を微かに寄せて疑問詞を表情に浮かべた。


『何か‥‥あるんですか?』

「藤堂……悠貴、様の……ご子息……?」

受け付けが口籠もっていると、エレベータホールから歩いてきた男性が足を止め、それにナルが反応した。


「……Steeb?」
「Daddy!」

ナルがその男の方に走っていく。あの人がお父さんか。
髪の色素は薄めだが、顔付きは日本人だ。ってことはナルはハーフかな。


一通り何か話した父親は礼を言おうとこちらを向いて固まった。



「兄さん…?悠臣…か…?」
『へっ??』


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