極楽蝶華 2 □■□■□■□■□■□■ ……何やってんだ、俺。 腕なんか使えなくても脚技使えば、逃げられるかもしれないのに。 もともと腕力は無いけど、……っ、なんで抵抗しないんだ?? 男相手のキス、でなんでか腰砕けて……、挙げ句、……立てない。もう逃げられないし……っ。 久遠先輩と自分の口から、唾液が糸を引いてるのを見て…… ……なんだかよくわかんないけど、涙が出た。 恥ずかしい、とか情けない、とかそんな感情がぐちゃぐちゃになって俺から溢れ出して。 覗き込まれた顔に、一層熱が集まるのが嫌な位分かった。 『……っ、』 思わず……目を背けて……しまった。 だって……同性に、キス…されて……気持ちいいとか、思って… あんな声上げて……泣き顔まで、見られて。 顔なんか合わせられない。 何で、何で俺あんな…… 手の甲でぐりぐり目を擦っていると、ふぃに顔を両手で挟まれて持ち上げられて瞳を覗きこまれた。 「……ごめんね……」 茶色のビー玉みたいな瞳が真っすぐこちらを見つめている。 「……いきなり…こんな………君に、……」 綺麗な顔はすごい困った様な表情をして、俺を覗き込んできてて。 「…嫌だった、よね…ごめん……」 久遠先輩のほうが狼狽してて、今にも泣きそうで。 おろおろと、頬に付いた俺の涙の跡を指でなぞり…整った顔に苦痛を浮かべてただひたすら困窮していた。 …そんな顔をされると、…こっちが困っちゃうじゃん… まるで、悪いことをしたようなばつが悪い気持ち。 『……び、びっくりした、だけですか…ら… そんな顔……しないでください……。』 「…本当に?」 伏せていた顔が上がった。 少し寄って来ている…… 『……っ、びっくりして……あと、ちょっと恐く、て…たぶん、それだけ…です。』 体を離そうと身を退いた瞬間、久先輩遠に抱き寄せられた。 「…よかった……」 耳元で安堵の溜め息がきこえてきた。 吐き出された息が首筋にかかり、少しくすぐったくて。 ……何故か、気恥ずかしくなった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |