極楽蝶華
17.理事長室にて
…………
『……悠貴サン??』
奥にまた違う人が見えて、招き入れられる。どうやらこっちが理事長らしい。
『どうも、初めまして。藤堂悠紀仁と申します。
これからよろしくお願いします。』
両手をズボンの縫い目にピッシリとそろえ、背筋を伸ばしたまま90度に身体を曲げて深々とお辞儀をした。
うん。最初が肝心だよね。
最初が。
まぁそれでいくと琉崎とは最悪かな。(ノ∀`)タハー
暫らく話していくと、理事長と悠貴サンが友人だ、と知ってびっくりした。
二人ともこの学校に通ってた同級生だそうだ。
そしてびっくりさせようとここで俺を待っていたらしい。
「それよりも……どうしたんだい?その格好は。」
あぁ、このカツラと眼鏡のことですか。
『あまり(問題起こしたりして)目立ちたくないので……おかしいですか?』
そう言うと悠貴さんは苦笑して
「いや……そうだな。(君なら)必要だろうな。でないと(君自身が)危ない。」
と、のたまった。
……前の学校でのやんちゃ振りを知ってるのか?やっぱおとなしくしてた方が良いな。
「悠貴……、じゃ、下は……?」
「うん。かなり……目立つだろうね。」
まー髪の色とかいちいち言われんのめんどくさいからね。どうしたって目立っちゃうし。
「そうそう。君の部屋は302号室だよ。部屋に行って荷物を片付けるといい。授業は明日から出てもらおう。」
『はい。わかりました。』
基本家事一般好きな俺は荷物片付ける時間が大量に出来て内心ウッハウハだった。
「同室の子は……まぁ、(その格好なら)大丈夫だろうな。だけど、気を付けなさい。」
「申し訳ないが……一年のAグレードの空きはそこしか無くてね。」
『?はい。では、どうもありがとうございました。』
グレード……?
さっき貰ったパンフに書いてあるだろうか。
「あと一つ」
踵を返してドアに迎う俺を悠貴サンが呼び止めた。
『なんですか?』
「その変装は、なるべく……といわず、解かないように。いいね?」
『分かってますよー。』
なんたって生徒会長様は敵対チームのヘッドだからな。いくら何でもこんな仲間がいない孤立無援の中バレたらどうなるかくらいわかるって。
「そうか…。…気を付けるんだよ。いいね?」
『わかりました悠貴サン。それでは失礼しました。』
二人とも、お互いの言葉の真意に気付く事無く別れてしまった。
こうして悠紀仁君は善意の第三者からの警告を受ける最初で最後のチャンスをむざむざ見逃してしまったのだった。
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