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極楽蝶華
スランプ
 



「……っ違う、違う違う違う!こうじゃない!」


バンッ、と大きく叩いたデスクに上に乗っていたマグカップからコーヒーが溢れた。
木目を濡らす褐色の液体にぼーっと視線を向けながら、どう紡げはいいのか、どうやって表せばいいのか分からないこの思いとフラストレーションをモヤモヤと胸中で思い描いた。


「違うぅ……何かが違う……」



わかってる。これはこれでそこそこ萌える。

だがしかし『そこそこ』じゃダメなんだ。それだけは分かってる。
それに……


「……ユウちゃんとライちゃん、その萌えっぷり……100%表現できて……ない……」



問題はそこだ。
今私がワードで打ち込んでる物語の主人公達……この2人にはモデルがいる。

違和感と言うのか。不自然と言うのか。
実際の二人はこんなもんじゃない。もう見てるとそれだけでお腹いっぱいになっちゃうくらい可愛いのに。萌えるのに。

この微妙に合わない、mm単位でズレた鍵が私のジャスティスの扉を開かない。



もっともっと、この二人のえっちを萌え萌えに描写する言葉がある。または、台詞が。シチュエーションが。体位が。前戯が。

間違いだと言うことは分かってるのだが、正解が分からない。



「うっ、うっ……
神様、千里眼の能力をください。今すぐユウちゃんとライちゃんがイチャイチャしてる所が見たいです……うぅっ、」


こんな事願われた神様はたまったもんじゃないだろう。



「……ユウちゃんがオネダリする言葉が浮かばないよぅ、萌えキュンする台詞が……」




ぱらり、と横に置いてあったノートを開いた。
こんな時は初心に返るに限る。


びっしりと文字が書き込まれたページを見返しながら、2人の設定、もとい2人(主にライちゃん)から聞いた馴れ初めやら普段の2人のやり取りをじっくりと脳内に浸していった。

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