極楽蝶華
不動への怒りが解けることは多分ない
「そう。正解。頭もいいのね。」
「恐れ入ります。」
軽くお辞儀をして村上さんが姿勢を戻す。
その姿を見てカゴメさんが椅子を奨め、やっと村上さんが腰を降ろした。
・・・・従者としてではなく、村上さんは礼儀として座らず言葉を待っていたらしい。
いや、俺だって、普段なら招かれた先で勝手に椅子に座ったりしない。
いや・・・・でも、半ばパニックになったとはいえ、それでも、悠紀仁さんの前で礼儀を疎かにして知り合いに対して失礼な態度を取った事実は変わらない。
俺は、自己嫌悪で軽くへこんでいた。
残りは未だ警戒を解いていない。
今までのふざけたような物言いを止めたカゴメさんがその様子を見て、改めて俊ニィ達や俺の方を見て軽くため息をついた。
「それにしても、あなた達自己紹介はまだなのかしら?」
未だ軽くピリピリしながら、その言葉でやっと俺を含めた5人が自己紹介をした。
兄貴と奈緒さんは2秒で自己紹介を終わらせていた。まだ随分不機嫌らしい。
それに呆れながらカゴメさんが言葉を返す。
「嫌ねぇ、村上君てコが言ってたでしょ。
それに私ははるちゃん・・・・ユウちゃんのお父さんによろしく、って言われてるからちょっとからかっただけだってば。」
「いやぁ、まぁ、僕は薄々感づいてましたよ。
どう見ても本気じゃなかったし。」
「・・・・確かに感は良さそうね。」
奈緒さんの言葉にカゴメさんが少し目を細める。
長年知った者にしかわからない、[奈緒さんがイライラしてるときの笑顔]に内心これ以上面倒を作らないでくれと祈りはじめた。
「えぇ、ただ、女顔って言われてちょっとイラッとして春日に八つ当たりしただけですから。」
・・・・ご愁傷様。
春日さん、昔から生徒会の仕事サボったりして奈緒さんに怨み買ってるからなぁ・・・・
今までの不動の悪行の数々や数え切れないほど流れた浮名を思い起こしてうんうんと一人頷く透。
本人はgoing my wayを地で行くような唯我独尊男を二人も兄に持って、目の前のサタンのような3人目の傍若無人も含め家でも学園でも思うように使われているのですっかりパシリ体質が身についてしまっている。
春日さんも巻き込まれて気の毒だなぁとは思っているが実のところ自業自得だからしょうがないと達見していた。
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