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極楽蝶華
隆也一人勝ち
 




唯一、この状況をどうにかしてくれそうな悠紀仁さんは未だ他の皆さんと一緒にかぶりつきでカタログに夢中だ。


どうしようか、もう一度面白そうに詰め寄るカゴメさんと冷や汗をかきはじめた春日さんに目を向けた時だった。



「そろそろからかうのはやめて戴いて宜しいですか。」

二人の間に割って入ったその人に目を疑った。


「・・・・貴方もキレイな顔してるのね。彫刻みたい。」

「そうですか。ありがとうございます。
・・・・遅ればせながら自己紹介をさせていただいて宜しいでしょうか。」

「えぇ、どうぞ。」


村上さんを見据えすぅと目を細めたかなりの長身。立っていたときの丈から考えると恐らく170後半といったあたりだろうか。
その顔をまじまじと見ていると、
「何で恵まれた容姿をしているのに・・・・」
とげんなり感でいっぱいになった。普通の男性の恰好をしていればさぞかし女性にもモテただろうに。


「初めまして、村上隆也と申します。
藤堂家に代々仕えている家の者です。悠紀仁様がご贔屓になされている店の方であれば、今後もお付き合いがあると思いますので。
これから宜しくお願いします。」

深々、とお辞儀をした村上さんを見てカゴメさんが目を細めて笑った。


「初めまして。まともに挨拶が出来たのは貴方だけね。
私は渡部かごめ(ワタベカゴメ)。ここの店長兼デザイナー。よろしくね。」


カゴメが出した手を隆也が握った。軽く振った後に手は離され、今までの皆への態度はどこ吹く風、とでも言うように呆気なく【店長】の顔に戻る。


「・・・・・・・・どう言う事。」

今までぽかんと口を開けて馬鹿面を曝していた不動がぽつりと呟いた。
余程本人にとって急展開だったらしく、髪の毛に指を差し込んで頭をがりがりと引っかいて軽く首を傾げている。


「おばかさん、あんなにあからさまに口説く人がそういますか。ここは学園の外ですよ。
お遊びかからかってるだけに決まっているでしょう。」

見下された視線でふん、と鼻で笑われて不動の口から疑問詞が漏れた。


「それに、悠紀仁様が親しくされている方の内にあんなに不躾な誘いを本気でなさるような人がいるはずがありません。
渡部さんはずっと【〜だったらどうする?】と仮定系で返していました。その言い方や、さっきの言葉から察するに・・・・まぁ恐らく通過儀礼、といったところですか。」


やれやれ、しょうがないなぁ、
そんな言葉が聞こえるくらい義務的な説明がなされた。
不動はそれを聞いてやっと頭の整理がついたらしく小さく口の中で「チクショウ」と呟いて視線を机の木目にぶつけた。

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あきゅろす。
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