極楽蝶華
からんころんからん
バーの横の扉から、若干狭くて急な階段を上っていく。
外装同じくここの壁も煉瓦作りなのだろうが、天井と床近くに少しだけその顔を覗かせて後は一面ポスターで被われていた。
・・・・よく見てみると、それはほぼ全てどこかのバンドのライブやCD発売の告知ポスターだった。
一番下に見えるボロボロの紙は、端しか覗いていないが相当年期の入っているものだと知れる。
どうやら上へ上へと張り重ねるうちこんなカラフルでアグレッシブな壁が完成したらしい。
所々に貼ってある少数派はステッカーで、恐らくこれもどこかのチーム達の物だろう。
階段を上り終わるまでに、すっかり今から入る店の客層が伺えてしまった。
からんころんからん
『ちわー。カゴメさーん、おじゃましまーす。』
悠紀仁さんが年期の入った真鍮のドアノブに手をかけると、店の外装に見合った何とも響きの良いドアベルが出迎えた。
全員が入る為の若干の開け閉めにともない、それは断続的にころころ鳴いていた。
『悠紀仁さん、ここの店の人と知り合いなんですか?』
カゴメ、恐らくここの店員か店主の名前だろう。
この規模の店、そしてカウンターらしき場所に誰もいないことからそれは店主の名前である可能性は高い。
それを呼ぶとなればただの店と客の関係ではないだろう。
「うん。この店のオーナー兼店主兼デザイナー。
カゴメさん。」
「はーいはーい。ちょっと待ってねー。」
少し遠くから・・・・低めの声が。
程なくしてカウンターの奥、黒いビーズと麻紐のアジアンテイストの暖簾の向こうから、背の高い、綺麗な
「あらー、ユウちゃーん、久しぶりー。
・・・・と、ライちゃんも。久しぶり。」
オカマが出て来た。
・・・・女性的な言葉遣いの割にハスキーボイス、でごまかせないくらい低い声だったから嫌な予感はしたんだよ。
「あらっ、後ろはユウちゃんのお友達?」
「そう。俺の持ってるカゴメさんの力作、あれ見てここ来たいって言うヤツが4人ほど。
後は遊びに来ただけだけど。」
・・・・深く考えちゃいけない。深く考えちゃ。
悠紀仁さんが外見で人を判断しないなんて前から分かってた事じゃないか。
「それにしても、相変わらずユウちゃんの友達は良い男ばっかりね〜。
ライちゃん以外全員新顔だけど皆ユウちゃんの魅力にフラっと来た口?」
悠紀仁さんだけ、キョトーンとしている。
他は皆予想外すぎる【カゴメさん】の来襲に現在の状況を飲み込めず固まっていた。
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