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極楽蝶華
日本の夏、アスファルトの照り返し。
 


「あっちー」

「・・・・陽射し強ぇ・・・・」

「熱気すご・・・・」

「地面熱い・・・・」



空調の効いた快適な屋内から出た途端日本の夏にくじけそうになったのは俺もだけど。


じっと立ってると靴底を通じてアスファルトがジリジリ俺の足の裏を蝕んでいく気がした。



「なぁ、悠紀仁、ハイヤー呼ばねぇか。俺が出すから。」


ちなみにこの高校生に似つかわしくないセリフはもちろん金銭感覚が麻痺している俊のだ。

『じじくせぇなあ。めんどくさがんじゃねーよたかが10分程度の距離。』

「暑いものは暑い。」

『じゃあ一人で乗れば。俺歩くからな。』


タクシーの類の高級な乗りもんダチの奢りで乗るとか嫌だ。

まぁちょっとめんどくさい距離ではあるが、別に大した時間かかるわけじゃないし。


「・・・・チッ。」


小さく舌打ちをして俊が俺に続いて足を進めた。
まぁまだ不承不承、といった風ではあるが。



『なんだよ。イヌ科なら散歩好きだろ。』

「・・・・何だその【イヌ科】って。」

『イヌ科のオオカミな。俺の中で俊はオオカミのイメージなんだよ。』


目付きとか、雰囲気とかが。と続けると周りが次々に頷いた。


「じゃあ俺も獅子緒や春日みたいにペットになるのか。」

『ん?いや、お前はペットってガラじゃねーだろ。
レオは猫で不動はハスキー、透はビーグルだからな。

俊はただでさえ俺の言うこと聞かないし。ペットには向かない。
第一お前一人の方が好きだろ。』


そう言ったら俊がひどく難しそうな顔をした。


「お前とだったら、ずっと一緒にいたいぞ。俺は。」

『?そーなん?
でもさ、やっぱ無理だな。』

「何が。」

『お前の事を可愛がる俺を自分で想像できない。』


そう言ったら俊がすごい不機嫌になった。


なんだよ。可愛がって欲しかったのか。



ぶーたれた俊の背中にそう言うのはやめておいた。


だって俊がレオや不動や透みたいに甘えて来るとこ想像出来ねーし。

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あきゅろす。
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