極楽蝶華
ごほうびは?
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言ってくれない。
言い出すそぶりすら見せてくれない。
もしかして忘れてるんじゃないだろうか。……この人なら十分にありうる。
大切な大切な報酬について確認をするために、悠紀仁さんの近くににじりよって床にしゃがんだ体勢から悠紀仁さんを見上げて膝に手を置いた。
『……悠紀仁さん。』
「何だよ透、無駄に神妙な面持ちなんかしちゃって。」
神妙にもなりますよ!
『俺がソフトクリームをパシってきたご褒美はどうなったんですか。』
「あぁー……
って何、お前アレ本気で言ってたのか?」
なっ……?!
『悠紀仁さんは本気じゃ無かったんですか?!』
「え、ちょ」
『本気じゃないのに、ぎゅーってしてちゅーしてくれるとか俺の純真な恋心を玩んだんですか?!』
炎天下ここまで走ってくる俺の脳内では
「透、ありがとなっ」
って満面の笑みを俺に向けつつ美味しそうに頬張ったソフトクリームが唇の端に付いたのを上目使いで舐め取った後、その細く華奢な腕で俺の事を抱きしめた後頬にその……ぷにぷにの唇でちゅーをしてくれる、そこまで再生されてたのに!
『……ッ酷い、酷すぎる……ッ!!
可愛いからって何でも許されると……いや許しちゃうけど!
どーせ「ごめん」の一言と頭撫でられでもしたらまたすぐメロメロになっちゃうけど!……でもこんな……』
「いやいや、ちょ、待てお前。」
何故か知らないが慌て気味の悠紀仁さんに、頭を抱えて胸に押し付けられた。
……ポ、ポジション的に、抱っこされてると考えて……ッいいよな!いいよね!
あっ……なんか、イイ匂いが!イイ匂いが俺の鼻から肺から……ッ!!
「お前、声デカイんだけど……。」
『あ、ス、スイマセン。』
そうか。顔を悠紀仁さんの鎖骨の辺りに押し付けられたのは声を塞ぐためか。
でももう理由が何にせよこの体勢はご馳走様と言うしか無い。
同じ男なのに何でこんなに胴が細いんだろう。何でこんな触り心地がいいんだろう。
これはもう悠紀仁さんは俺に抱っこをされるために存在すると考えていいんじゃないか。
いや、むしろ俺が悠紀仁さんを抱っこするために存在していると考えて……
「透、お前、聞いてんのか。」
『へ?』
「俺が話してんのに上の空たぁイイ度胸じゃねーか。
何考えてたんだよ。」
『あぁ、ハイ、それはですね、悠紀仁さんが何でこんなに可愛いのかという事に対して考察を……』
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