極楽蝶華
なぁなぁ
『そう言やぁ……透、お前どうやってここまで来たんだ。』
ここに来るまでと来てから、誰も透にメールや電話をかけて移動先を知らせてはいない。
そして俺らがいた広場からここは見えない。ましてや闇雲に探し回って見付かる距離では無い。
敦なら、自分で言っていたように俺らの誰かのケータイ使って今朝みたいにGPSハッキングして居場所が特定出来るんだろうが、透もパソコンが得意とは言えそこまで出来るわけは無い。
あれはもう得意とか好きではなく変人のレベルだと思う。
「あぁ……そこらじゅうに、ナンパ待ちで待機してる女がいるだろ?たくさん。」
『……あぁ。』
待機どころか特攻しかけて来たバカに嫌な思いさせられたばっかだよ。
「あの辺にいたそーゆーのに、
「ここらにいた無駄に顔がいい男達どこ行ったか知らない?」
って聞きまくって追跡してきた。兄貴達もそーだけどこのメンバーと人数なら目立ちまくりだからな。一回も迷わなかったよ。」
『……ケータイで電話すりゃよかったじゃねーか。』
「悠紀仁さんに頼まれたソフトクリームで両手塞がってたからな。
他のやつに持っててとかやりたくねーし、無理。」
……まったくコイツはガキの頃から変なところで細かいんだよな。
神経質かと思えば、今回みたいにナンパ待ちの女に聞きまくって俺らの後辿ってくるとか無駄に思い切ったことやりやがるし。
……まぁ両方とも他人に興味が無い故に出来る事か。
視界の端では敦が春日に何か言われてしょうがない、といった風情でパソコンを再度弄り始めた。
さっきの一件の悠紀仁の画像をフォルダごと俺のパソコンにも送れとか言ってんだろどーせ。
ホントは独占したい。
つーか写真だけじゃなくて悠紀仁を。
むしろ画像なんかくれてやるから悠紀仁自身がいればいい。
いややっぱ写真もダメ。誰にもやんねー。
「っ……んだ、俊かよ。
いきなり何、人の首触って。」
手を延ばして斜め前にある白い項に触った。
そのまま指を銀色の絹糸に絡めて、梳る様に滑らせた。
『……何でも。』
「んだよ、変なやつ。」
『用は無いけど、ただお前の髪、見てたら触りたくなった。』
「……んとに、変なヤツ。」
ぷい、と呆れた様に顔ごと逸らされた視線。
悪いけどお前、考えてること隠すのに向いてねーよ。
だって耳がちょっと赤い。
テーブルに肘をついて手で口元を覆って、ニヤニヤしちまった顔を隠した。
やべぇ、かわいい。
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