極楽蝶華
あだ名
「そう言えば、澤村君何年?獅子緒と対等にしてるあたり高校生だとは思ったけど。」
学年すら確認せず一人の人間を転校させようと勧誘する奈緒。
この辺がいかにアイツらしいかが出てるな。
「2年ですー。確かけーと同し学年じゃったな。」
あぁ、と低く呟く圭介。ただし彼は今汚れた口の周りを舐める悠紀仁を見るのに一生懸命で敦の方に視線を向けることはない。
「……つーか俺さっきむこーのあっきーとかじゅんじゅんに自己しょーかいしとるとき言うてませんでした?」
「あぁ、聞いてなかった。」
いかに奈緒らしいかが伺えよう。
「……まぁええけどな。」
敦は早くも奈緒に対しては何を言っても無駄だということを学んだらしい。
「あぁそうそう。なっちーに聞いときたいんじゃけど……
光陵学園て全寮制じゃろ?同室誰になるか解る?」
「……ちょっと待って何で僕の方見て言うの。【なっちー】って誰?」
「へ、だって久遠奈緒、じゃろ?じゃけんなっちーじゃ。」
珍しい、奈緒が絶句してる。
「あー……奈緒先輩、あちは人にあだ名つけるのクセみたいなもんだから、気にしない方がいいよ。」
「クセっつーか敦はダチには必ず変なあだ名付けるからな……」
あだ名で呼ばれている圭介が半ば呆れたように呟いた。
だがしかし変と認めていながら止めろと言わないのは言っても無駄と言うことを表してるようだ。
『そういや何で澤村は悠紀仁の事を通り名で呼ぶんだ。従兄弟だろ?』
「や、もうお互い物心着く前から家族付き合いがありましたからね。
ちっちゃい頃舌が回らずに【ゆー】って呼んでたそのままってだけで。それがそのまま周りの人らに通り名として定着して。」
「そうすると悠紀仁が【あち】って呼んでるのもちっちゃい頃の名残か。」
「そっす。」
「……ロリショタ……ロリショタ萌えるぉ……」
違う。あれは幻影だ。俺に弟は一人しかいない。
双子?知るか。他人の空似だ。
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