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極楽蝶華
悠紀仁は大変なものを盗んでいきました
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「悠紀仁さん!」


従兄弟の名前を呼ぶ声に店の入口に目を向けると、両手にソフトクリームを持った男が一人。

いや、タッパはそこそこあるけど男の子、かな。
チームでもないのにゆーの事さん付けしとるちゅーことは多分ゆーより年下じゃろ。


さっき来た時おらんかったけど……双子のにーちゃん達とエライ顔が似よるけぇ、兄弟なんか?
すると……こいつが【透】君か。

まぁ、俺も人の事よう言えんけど、まったけったいな色した頭しとるのう。


値踏みも兼ねた俺の不躾な視線を無視して、透君はゆーの方へずんずん歩いていく。
……無視っちゅーか、ゆー以外見えとらんような感じじゃな。


「悠紀仁さん……っ、酷いですよ!何で勝手にいなくなるんですか!」

「え……あ!!ヤッベごめん忘れてた!!ごめん!」

「わす……ッ?!
ひ、酷い……ソフトクリーム食べたいって言ったの、悠紀仁さんじゃないですか!!
【帰って来たらぎゅーってしてほっぺにちゅーしてください】って頼んだらOKしたから俺は……
それを……忘れただなんて……ッ!」

「わ、悪い悪い……だって、こんなに大勢いるから、一人くらいいなくても気付かなくてさ……」

「うぅ……
……俺って、悠紀仁さんにとってその程度の存在なんですか……?
忘れられちゃうような……?」


……これもゆーに惚れとんのか。またアイツは色々面倒ごと持ってきよるわ。
何人のハート持って行きよったら気ぃ済むんじゃまったく。

確認をするためにけーに向けて人差し指をちょいちょい、と動かした。
身を乗り出して内緒話の体勢になる。


『……あの子。透君言うんじゃろ?
そこの双子の弟やんなぁ。あの子もゆーに惚れとるんね。
……透君ははーさんの試験通ったん?』

「いや、悠臣さんと会ったときはアイツはまだ微妙だったから……受けてねーな。
お前がやんの?」

『何じゃ。止めとけ言うつもりか?』

「いや、その逆。
……泣きっ面見れたら楽しいだろうなぁ。」


けーは一人面白そうな顔をして、背もたれに身体を戻した。
勝手な事言いよって。俺は鬼じゃないけぇそんな酷い事出来んわ。


そもそもゆーの為じゃ無きゃこんな事やりたないけぇ。
さっきのこの人達は純粋な殺気と怒りだからえぇけど、嫉妬とか憎悪とか……、そーゆーのは向けられる方は楽じゃないけぇの。


でもしゃーないんじゃ。ゆーはこんなだし。
俺がしっかりせんとなぁ。

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