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極楽蝶華

悠紀仁君……の夕飯も取ってこなければだし――


とりあえず食堂に行こう。

目を覚ますことは無いだろうが、一応状況を簡単に記した置き手紙を残して来た。



『……また何やってるんだあの人は……』


食堂に向かう途中の廊下で琉崎会長が2年生の首を掴んで壁伝いに持ち上げて、ギリギリと音がしそうな程力一杯首を絞めていた。



『いい加減にしてください。殺す気ですか。』

肉食獣の目で睨まれるが、臆すること無く言い放った。

会長の興味が無くなったらしい対象は、尻餅を着くと慌てて逃げ出して行く。
それを横目で見ながら、琉崎会長を改めて見て素直に見たままを喋ってしまった。


『……またあなたもずぶ濡れで……』

一体何をしたんですか、と続けようとして、琉崎会長の目を見て次の言葉が詰まった。


「……また………?……他にずぶ濡れの奴、どこで見たんだ…………」


……そういえば、悠紀仁君は会長に追われていたみたいだし……恐らく今回の傷もこの人の所為…だろう。

『寮の入口で。』


不安を、今思い当たった懸念を悟られぬように、適当に嘘を付いておく。

が、それを聞いて琉崎の口角がにぃ、っと上がった。


「やっぱり、ここの生徒か……」


琉崎会長の持っていた深緑色のネクタイに目が行く。

…琉崎会長のネクタイは――生徒会専用の――黒地に銀のストライプ。第一三年は紺色だ。……では誰のだ?




――悠紀仁―――

確かネクタイはしていなかった。……探しているのだ。持ち主を……




最上階直結のエレベーターに向かう背中が、とても楽しそうに見えた。

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あきゅろす。
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