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極楽蝶華

『この子は……』


確か会長に追い掛けられてた子だ。

銀髪の人間は他に知らない。


「――っ、先輩、知ってるんですか?」

驚いた様な顔をしている。

『いや、……ここの廊下でぶつかったんだ。昨日。』

「あ……そうなんですか。」


それにしても……

昨日は突然だった事と、会長が影になって見えなかったので、珍しい色の髪しか覚えていなかったが――


   ――綺麗だ――


ただ純粋にそう思う。

自分はノーマルのはずだが、目の前の人物はあまりにも……外見が人離れしている。



肩から滲む赤の痛々しささえよく似合う。


『……とりあえず、僕の部屋に運ぼう。――このままじゃ埒が開かない。』

細い体躯を抱き上げた。



――他意はないぞ……他意は――

言い訳のように自分に言い聞かせる。


「あ……、はい。」

床に落ちてた、この少年の持ち物らしい白いプラスチックの鞄を持って一年生が後からついてきた。

持ち上げたときに、中から少し水が垂れてカーペットに染みを作って
そこだけ布地の色が濃くなった。

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