極楽蝶華
逃げきれ……ない!!
ころ合いを見計り一気にその場に伏せて、後からやってくる俊に足払いを掛けた。
すんでの所で避けられたが……狙いはこの次だ。
態勢を崩した俊に向けて後ろ回し蹴りを放つ。
ガードされたが、威力は完全に殺し切れてない。
壁まで飛んだ俊の口から低い呻き声が漏れる。
何回かこうやってなんとか撒いて逃げよう。
踵を返してまた走り出そうとした時、突然後ろから抱き締められた。
『――っな、』
俊だ。
俺には腕力が無いからコイツを引き剥がせない……
近づかれないように、元々そのための脚技だったのだ。密着されたら……少なくともコイツが相手では、勝ち目が無い。
これまでは自分を射程圏内に捉えるまで近付けた奴などいなかった。
その前に一蹴の元に伏されていたからだ。
だが、シュンは……俊は――――別格だ。
前回掴み掛かられた時は、その勢いをそのまま利用して膝蹴りを入れた後、態勢の崩れた俊を何とか投げ技まで持って行く事が出来たが……
今回は腕を動かす余地が無い程しっかりと後ろからホールドされている。
――打つ手無し、だ――
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