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極楽蝶華

 




「……最初にしたみたい、にっ……俺に……俺の、口ん中、……舌で舐めて、深く、まで、してください……」


恥ずかしそうに、何かを堪えながら。
上気した頬が、涙をこらえているような目元が、真っ赤に色付いて

銀色から覗く耳の先まで、今にも溶けてしまいそうな位紅色に染まっていた。

私は、先程の言葉に理性を失わないよう、敢えてゆっくりとした動作で悠紀仁様の頬に触れた。


瞬間、瞼が少し伏せられ、何かを期待した目で下から見つめられる。
その瞳に気が急くのを必死で抑えて、また意思確認をするべく聞いた。


『……それは、ディープキスの事ですか?』

「……は、い……。」


答える悠紀仁様は、また不満そうだった。


『貴方の咥内を舐め回して、舌を吸って、歯列の裏まで粘膜でなぞる……その事を言っていますか?』

「…………はい。」

『……それを、して欲しいのですか?』



「…………。」


『悠紀仁様?』



ちゃんと、ちゃんと確認をしないと今すぐにでも全て奪ってしまいそうで……自分を見失いそうで恐ろしかった。


「……して、……して欲しい。隆也さん……」


既に薄く開いている唇を舌で掠めて、覆うように全体を塞いだ。

中に舌を入れてすぐ、絡んで来た悠紀仁様の粘膜に……自分でもぞっとする程大きい欲求が首をもたげて来たのに驚いて、急いで唇を離した。


「………なん、で……?」


詰問口調と少し咎めるような瞳に、もう一度保証を求めた。


『今から、貴方の口の中に舌を挿れます……いいですか?』

「……ん、。」


薄く開いた瞼の奥から、濡れた瞳が私の欲望の根元を掴んで思い切り揺さ振って来る。
本当に深い口付けをしていいものか、とキスを躊躇っていると、涙目のまま怒った表情になる。


「……俺の、口ん中……舐めて。隆也さん。」


何故してくれないのか、そんな剣幕で言われ、自分の状態も忘れ唇を押し付けていた。


……好きな相手に求められて、断るには、まだ私は理性が足りないのだと思う。

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