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極楽蝶華

 

「……ッあ、あの……やっぱり今の無……」
『悠紀仁様は』


慌てて訂正を言い出した悠紀仁様の言葉を遮って、聞き間違いでは、考え違いでは……と思った疑問を口にした。


『……今、私に理性が無くなればいいとお考えですか……?』


ややあって、こくん、と上目使いのまま控え目に肯定の返事があった。


『……そうして、また……口付けをすればいい、と?』


カッ、と首まで赤くなって、下を向いたまま私に抱き着いて来た。

甘えるように首元に額が擦り寄せられ、背中を撫でると腕の中から「うん」、と、小さい返答があった。


思わず自分の欲に熱が集まりそうになるのを感じ、慌てて自分を戒める。



こんな往来で、まさか自分が欲情するなんて思ってもいなかった。


『……悠紀仁様は、私にキスをして欲しいのですか?』




夢じゃないか、と思いつつ、確認を取った。

間違いであって欲しい気持ちが2割、そうであって欲しいと願うのが8割。


2割分は、残っていた理性でなく、もしそうだった場合この先含めて自分の気持ちや行動を抑える自信が無い故の不安だった。

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