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極楽蝶華

 

 


『……やっぱり悠紀仁様には隠してもわかってしまいますね。』

これでも、親や兄弟にさえバレたことは無いのだが。
……演技は、元々得意だから。


「……何で隠すの?」


『え?』

「何で、疲れてるの隠すんですか?」


……しまった。


不用意に本音を漏らしてしまった揚げ句……返答のしようが無い。

しかも、……何でだろうか。悠紀仁様が怒っている。



「やっぱり……近くで見ると、顔色悪いし。
隆也さん、さっき触った時に思ったけど……熱もある。……何でこんななるまで誰にも言わないんですか?!」


熱……は、やはりここのところあまり寝ていなかったのがたたっているんだろうな。

野村の処分や獅子緒の生徒会入りの件で仕事(と心労)が増えた所為かもしれないが。

……いや、両方か。


『言ったところでどうなる物でもありませんし……頭や身体を動かしていた方が、治りが早いんです。……私の場合は。』


言ったところで(他のメンバーが私の仕事を片付ける訳でも無いし、仕事のスピードが上がる訳でも、あの人達が貯めた仕事の量が)どうにかなる物では無いし。

隆也、括弧の中長いよ。


「……でも、無理したらダメですよ……。」


悲しそうに寄せられた眉で、悠紀仁様の真意に気付いた。

……あぁ、怒っていたんじゃ無くて、心配されていたのか。

だが、こっちの方が心苦しい。

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あきゅろす。
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