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極楽蝶華

 


「大丈夫。すぐ終わるから。」


一度安心させようと軽く笑って、前を向いた。



近づいてきた奴の腹に半ばカウンター的な足刀蹴。

後ろにブッ飛んで並べてあったハードルにブチ当たった。
痛そー。


左側にいた奴には振り向き際に裏拳をお見舞いし、そのまま鳩尾に拳を埋めて静かになってもらって。


向かいにいた奴が殴りかかってくる――より早く、伸びて来る腕に蹴りを軽く入れて威力を殺し、
 そのまま足を腕に絡ませ――足首を肩に引っ掛けて叩きつけるように床に落とした。

もう一人、上げていた足を二段モーションで蹴り上げる。また後ろに飛ばした。


――あと、一人。

後ろを向くと、キイキイ鳴る扉の向こうに走っていく後ろ姿が見えた。

逃げられたか……。


まぁ、逃げられたものはしょうがない。
この人の事一人にはしておけないし、追いかけてドロップキックは諦めよう。



一息ついた後、辺りに散らばっていた制服を拾って呆然としている持ち主に渡してあげた。





『怪我ありませんか?』

「あ……はい。なんとか……
  でも――ありがとうございました。」


『あ、気にしないでください。俺集団で一人をどーこーっていうのが許せないだけなんで。
俺のおせっかいと思っといて下さい。』


とりあえずこいつらにやられた分は……ワイシャツのボタンが全部飛んでる、ってだけの被害で済んでいるが――


『血がずいぶん飛んじゃったなぁー……』

なかなかスプラッターに素敵なことになっているぉ。


体には痛々しい痣がいくつも残ってるし、これを着せるのはあまりにも忍びないなぁ。


「……えっ…!何して……」

いきなりワイシャツを脱ぎ始めた俺に相手がすごい慌てていた。

『あ、いや、【助けた代わりに】とか露出趣味じゃなくて……はい、これ着てください。』

と、脱いだワイシャツを差し出した。

「……なんで?」

『血がついたシャツなんて着てたらどうしたって目立ちますよ。
 俺が着てたら、【喧嘩の後】ぐらいにしか見えませんから。はい、交換。』

「そうじゃなくて……なんでここまでしてくれるの?」

『いや、お節介なんですよ俺。好きでやってるんで、ほんとに気にしないで下さい。』

「じゃあ……ありがとう。そっちは……洗っても落ちないだろうけど――これは明日洗濯して持っていくね。名前とクラス教えてもらえるかな?」



『あ、はい。1-Aの藤堂悠紀仁って言います。』

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あきゅろす。
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