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ぎんときゆめ

貴方の精子が愛でる世界に心中を




――ヌルリとした感覚が、私の首筋を襲った。


さわさわと揺れる白い髪が、頬を掠めてこそばゆい。腰にまわされた腕がより一層力を込めて私を引き寄せたかと思うと、硬くなった銀時のモノが私にぎゅうっと押し当てられた。


「あら、随分と元気みたいね」

「美味そうな獲物を前にすりゃァ、野良犬でも興奮するってェの」

「クスッ…貴方は犬なの?」


銀時、と私が彼の名を呼ぶと、彼は返事をする代わりに咬み付くようなキスをした。くちゃり、くちゃり、と私と彼が立てる水音が辺りに響いて体が疼く。銀時の厚い胸板に耳を寄せた私に、熱を帯びた銀時の身体が早く、早く、と急かすように高鳴っているのが伝わってきた。ああ、この人は私を、私を、求めている。私を食べたがっている。


「精子の危機とは無縁の人ね」

「なんだよ、それ」

「世界ではここ20年の間に、精子の数が25%も減少しているの。性ホルモンと生態系の破壊が懸念されているというこのご時世に、貴方ときたら全く性欲がとどまることを知らない」

「いいことじゃねェか。人類存亡の危機に、俺の精子が活躍する日も近そうだ」

「要するに貴方は万年発情期ってトコね。本当に盛りの付いた犬みたい」

「ハッ…その犬に喘がされてんのは何処のどいつだよ」


まあ嫌なヒト、と私が言うと銀時は笑った。

彼の体内で生産された精子が私のナカに飲み込まれていく様を想像すると、それはとてもグロテスクに美しく思えた。糖尿病の彼が作り出すソレは甘いように思える。私は他の人のソレを呑んだ経験が無いので、他と比べようにもサンプルが無いのではあるが、私の中では銀時のソレは甘いものとして認識されている。

そんな、甘ったれた銀時の精子に、人類が救われるなんてちゃんちゃら可笑しい。人類を救う前に、自分の体を守ってはどうだろう。


「糖尿病のクセに、」

「馬鹿。糖尿病寸前ってなだけで、俺ァまだ糖尿病じゃねェんだよ」


銀時は、笑った。

私もつられて、思わず微笑む。


私の身体が飲み込むのは銀時の精子だけでいい。他はいらない欲しくない。私は銀時、銀時さえいればそれでいい。他の奴らは視界にすら入らない。存在の認識すらされてない。私という器の中は、銀時と銀時の精子と唾液と性欲とほんの一握りの愛でいっぱいいっぱいに満たされている。ああ、私の全ては銀時なのだ。

銀時も、銀時も、私を全てにしてくれればいいのに。私だけを飲み込んでくれればいいのに。私だけにその精子をばら撒いてくれればいいのに。



「ねえ、銀時」

「なに」

「すき、だよ」

「それはそれは。セックスのし甲斐があるってェもんだ」


銀時の目が一瞬揺らいだ。

銀時はけして私に「好き」とは言わない。けして「愛してる」とは囁かない。それは嘘をつきたくないからで、私はそんな、嘘を吐かない彼が好きだった。



「ねえ、銀時」

「なに」

「すき、だよ」


彼は何も言わなかった。

代わりに私を強く、強く、抱き締めた。


――好きだとも愛してるとも言ってくれないこのヒトを、どうして好きになってしまったの?




流れる涙が止まらない。

私の全てが銀時で、銀時が私の全てならば、この涙も銀時の一部ということになるのだろうか。流れる、つたう、落ちる、弾ける。ああ、親愛なる私よ。どうぞ、その甘いあまい銀時を、止めど無く、流して



(今宵私を抱いた貴方は、明日には別の女を抱くの)


20081014*://ariseria




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