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嵐よ吹き飛ばせ、そして…
ほら、逃げないの

――――城の警備の人が叫んでいるのが微かに聞こえる。

城中が慌しくなり、時折城の外から発砲音が響き渡りはじめた。

佐助の身にまとう雰囲気も変わり、全てを見透かすかのような鋭い視線が城をさす。

「―――どうやら、始まったらしいな」

「うん・・・はやく元就の所に戻らないとっ」

城の様子からして奇襲。

たとえ頭のいい元就でも被害は小規模には抑えられない。

私も・・・加勢をしなきゃ。





「つかさちゃん、俺と一緒に甲斐へ戻ろう」

刀を帯に差し、元就のもとへと走ろうとしている私の前へと立ち塞ぐ。


「俺は――もう、つかさちゃんが危ない目にあうのはもう嫌なんだよ」

たかが一日、されど一日。

その一日の中で佐助がどう思ったのか、なんてわからない。

けれど少なからず私に好意を持っていて、守りたいという気持ちは佐助を見ればわかる。

「胸の傷は治った。けど、この戦でまた怪我をするかもしれない。もしかしたら死ぬかもしれない・・・」

「そうかもしれない。けど、それがこの世界でしょ?」

「つかさちゃんはこの世界の人間じゃない。いつか元の世界に戻らないといけない・・・」

「けど今、私はここにいる」


それに私はきっと元の世界には戻れない。

戻りたくない。


あそこにはもう私の居場所は無い。

戻ったとしても、この世界を放置してきた罪悪感で押し潰されるのがオチ。

なら。

たとえ、死ぬかもしれない戦でもこの世界が平和になるのならば―――

「佐助、私は戦う。それで平和になったらみんなの所に遊びに行く」

元親・元就に会って、けどまだ政宗や幸村には会ってない。

今、甲斐に行けば会えるかもしれないけど、元就を置いてはいけない。


戦の無くなったこの世界で、みんなで集って一日で出来なかった事をしたいのだ。


それぞれの好きなものや、得意なことを話し合ったり。

お酒を飲んで、どんちゃん騒ぎをして。


私はそんな事をしてみたいのだ。


だから、誰か一人でも欠けて欲しくは無い。


「もう、逃げるのは飽きちゃったんだからね、誰かさん達のせいで!」


背負う事は怖い。


けれど背負ったものを投げ出すことはもっと怖い。




もう逃げることは許されない――――――


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あきゅろす。
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