嵐よ吹き飛ばせ、そして…
ほら、仲直りして
中身にはにょろにょろと文字が綺麗に書かれていて何が書いてあるかわからないが、佐助はそんな私の事を理解しているらしく指先で文字を辿りながら音読を始めた。
「豊臣に侵入してる部下からの情報でね、まあ、色々あったけどなんとか受け取ったやつ。内容としては豊臣軍は各国の有力な戦武器および戦人を奪うべくして動き出したもよう。逆らおうとしようならばその場でその者を亡き者としている。現在、徳川、上杉、伊達にも部下を差し出せという文を送っている」
そこから先は、赤い染み――血で塗りつぶされて読めないが現状を把握するには充分。
それぞれの国のお偉いさんの事はよくわからないが、その豊臣軍は己の軍を強くするために他軍の戦力の要ともいえるものを奪い吸収している、ということ。
「―――それでここ中国にも文を出されているらしくて俺が直々に調べたんだけどね"水軍を頂く"っていう内容らしいのよ」
「水軍・・・っていうと船だよね。けどそれだったら元親の方が・・・」
元親の水軍の方がでかいし、大筒の積んでいる。それに外国との貿易で色々発達しているし。
攻撃力・防御力共に元親の方が上ではないだろうか?
「確かに鬼の旦那の水軍の方が強い。けれども、その他にカラクリ兵器があるから今の状態で攻め込んだとしても負けるのがオチ」
「だったら周囲の国を吸収した後に手に入れるまで、って事か・・・」
「そーゆうこと」
それに元就は智将とうたわれているらしいので、水軍と智将両方を手に入れることが出来、一石二鳥なのだろう。
しかも智将・元就へも文をだしている所から恐るるに至らないと自信満々のようである。
私は、倉を開け、今の自分でも扱えそうな刀を探す。
「ウチの大将ん事にも文が届いてさ、騎馬隊とそれを率いる真田の旦那を差し出せ。従わぬのならばその首貰い受けるって内容。ほーんと魔王さんよりも性質が悪いのなんのって・・・」
倉の外でため息を吐く佐助にこいつら苦労してるんだなあと内心労わりの台詞を囁き、長めの赤い鞘の刀と通常の長さの黒い鞘の刀、そして深緑の小刀をてにとる。
懐かしい感触と重みに戸惑うももう、逃げることはできないと覚悟を決める。
過去から逃げないで立ち向かう覚悟。
また人間を殺す覚悟。
そして、戦に参加する覚悟。
元の世界では逃げ回っていれば何も起きない。
他人に迷惑をかけることは無かったし、それなりに楽しかった。
けれどもこの世界ではきっとそのいままでの当たり前は辛いものとなるのだろうと思う。
ここでは逃げれば誰かに迷惑がかかる。
戦に参加しないのもいいのかもしれないが、参加していないものでさえも殺されるかの日々。
そんな世界で逃げ回ってのうのうと生きるのは正直、好きじゃない。
それに――――こっちに来てからも彼らと暮らし日々関わっている。
彼らをおいて逃げるだなんて私には、できない。
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