[携帯モード] [URL送信]

狂い狂わせ狂われた
龍を釣る話8






どうして俺は好かれないんだろうっていつも考えてた。



俺は、つかさは、どうして生まれたのだろう。


だって、愛さないなら、愛せないなら産まなければ良かったのに。

どうして、母さんは俺を産んだんだろう。


どうして父さんは、母さんは、勝手に産んで、勝手に生かして、俺に暴力をふるうんだろう。

嫌いなら、愛せないなら、憎いなら、さっさと殺してしまえばよかったのに。






俺は、赤ちゃんの時はどうだったか覚えてないけど気がついたときには父さんには叩かれて馬鹿にされて、母さんには毎日毎日、憎い、死ねばいい、と叩かれた。


なんで、叩かれるのか。

なんで、怒るのか。


どんなにいい子になろうと頑張っても二人とも俺を愛してはくれない。


周りの人も助けてくれない。


それはきっと"他人"だから助けないのだと小学生の年頃に悟った。

周りの人間はあくまで他人だから、と主張する。

他人でいれば自分達に迷惑は及ばないし、陰口を言える。


とても"美味しい立場"だからだ。

だから他人という立場で口出しをしない。

そいつらも、親も俺が叩かれるのを"楽しんでいる"んだ。

さぞかし、人を見下すのは楽しいだろう。

平等だのなんだのほざいてるくせに、結局は他人を見下す。


人間っていうのは本当に、都合のいい存在。





中学生ごろの歳には、全部諦めてた。


死ぬことすらどうでもよくて、気力も無くて更に酷くなっていく親の暴力にただ無表情で耐え続けた。

腕を刃物で切りつけられても病院に行くお金もなくてタオルを巻いた。

そうしたら勝手に人の物を使うな、と熱湯をかけられた。

父さんは俺が動けなくなるまで暴力をふるうとパチンコをしに出掛ける。


それで今度は母さんが俺を殴りにやってくる。


あの人は、私のものなの。

私からあの人を奪わないで、奪わないで!


涙をこぼしながら殴って叩いて挙句の果てには首を絞めてくる。

このまま絞殺してくれるといいのに、いつも途中で止めてふらふらと買物に出掛けていく。

父さんが帰ってくる前に痛む体を引きずって押入れの中で眠る。


眠れなくて考える。




どうしてだろうか、と。






どうしてだろうか。

愛してないくせに、俺を殺さない。

どうしてだろうか。















全部が絶望に思えた。

幸福な夢から覚めて、俺は怖い、不安、苦しい、憎い。頭が痛いんだ、とても。



「死んじゃえ・・・」


男の首を裂いた。

どうやったのかなんて知らない。

ただ、死んじゃえばいい、と刃物で切りつけるイメージをしたらなった。

血を噴出して倒れる人。


それが何故か、とても心地がいい。




「つかさ・・・?」

誰の名前だったか。

一瞬、誰のことだろうって思ってしまった。

けれどすぐに思い出して、自分の名前なんだなと思った。

本当の名前はつかさじゃないけれど、つかさって呼ぶから、呼んで優しい笑みを見せてくれるから。

つかさで良いやって。

振り向くと父さんと母さんが見える。

その二人の前に立つのはシゲで、刀を抜いてきた。

睨みつけ近づけまいとする姿に、微かに、微かに眉をハの字にしてしまう。



結局は。







結局は、シゲも愛してくれないのかぁ―――――・・・



[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
無料HPエムペ!