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狂い狂わせ狂われた
龍を釣る話6



「信じられねえ・・・」




「まあそうですよね。けれど確かにわたしとつかさは一緒に産まれて、生きてきた。だからこそつかさは不幸にならねばならなかった」


またもや疑問を増やす物言い。

こいつは何をしたい。

まるで世話話をするようにべらべらと話し出す。

一体、こいつはつかさと何があった。どうしてつかさが"不幸にならなければ"ならなかった。


継承争い、か?

「・・・・・・つかさの事が、知りたいですか?」

誘う視線に「知りたい」と口に出しそうになる。いや知りたい。もしかしたらつかさ自身も記憶を失くす前のつかさ自身も"知らない"であろう話。それを知っている男。

知りたくないはずがない。

しかし、ここで知りたいといえば。

「・・・・・・・・・こうやってつかさの話で釣って時間を稼いで、何をするつもりだ」

山賊の若頭がひとり。仲間はここにはいない。そして焦らすような会話の仕方。

・・・時間を稼いでいる。

「わたしは貴方を"試している"んですよ。貴方は取り引きには応じない、しかしこうやって直接やってきたつかさの話にも惹かれるように食いついてきた。貴方がつかさを想っている事は知っています。つかさも貴方を慕っているのも。しかし、それだけでは意味が無い。"つかさを抑えられるほど"の力もなければ、共にいる資格はない」

「――――・・・それは、」

どういう意味だ。

こいつが言うこと全部がわからないことだらけだ。

遠回りする物言いに、焦らす物言いに俺は気が騒ぐのを感じる。

城主ともあろう存在がこのような事で熱くなってはいけないが、いい様に転がされている気がしてならない。

「さて、時間稼ぎは終わらせていただきます。・・・つかさの事、知りたいのであればわたしを認めさせることです。わたしは、たかがいっときを生きる存在につかさをとられるということが不愉快で仕方ないのですから」

最初から最後まで見せた笑みは、言葉とは裏腹に揺らぎもせずに終わった。

目の前にいた男は忍の如くその場から姿を瞬時に消していった。




「・・・政宗様、」


「・・・南蛮語を話せるあたりからそこらへんの子供だとは思っちゃいなかったが・・・・・・」

俺が考えてるものよりもっと、"普通"じゃないのかもしれない。

「筆頭ぉ!」

「!」

急に茂みから飛び出してきたのは俺の軍の兵。

しかもあちこち切り傷が刻まれ、この脇の森の中で何かが起きている証拠だった。


「どうした!何があった!」


「筆頭!この先で、成実さんとつかさがっっ!!」

「つかさと成実がどうした!」














「つかさと成実が!――――やりあってるんです!!」




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