狂い狂わせ狂われた
親鳥の決断2
「――――・・・・・・っ、城下町は探させたか?!」
この部屋から出て行く前に話していたのは城下町の事。もしかしたら城下町に行ったのかもしれねえ。
小十郎が少し考える仕草をして、しかし、と付け加えた。
「しかし、城を出るには門兵の許可が必要です。つかさを一人で外にだすな、と伝えているので門を開けるわけは・・・」
「・・・っ、忍にこの城の外壁に"漏れ"がないか探させろ。それと、もしかしたら"山賊"に人質として拉致られた可能性も捨てきれねえ」
綱元とそれに続き成実も出て行く。
二人きりとなった空間は先程よりも重く感じ、まるで戦の一歩手前のようだ。ともあれ、城にいないとすれば外になる。今すぐ探しに走り出したい衝動を拳に力としてこめて、深呼吸をして解いた。
「・・・小十郎」
「・・・はい」
小十郎もまたいつもの芯の強い覇気がなく、同じようにつかさの無事を願っている。だが、俺と同じように探しに行かないのは個人の役割をわかっているからだ。
俺は国主でお前は軍師。
国主が自ら危険な場に出ることなど愚かなことでありそれ同様に軍師が危険な場へ出るということも同じく愚かなことだ。俺たちは的確な指示をしなければならない存在。
「もし・・・つかさが人質と捕られ侵攻された場合、・・・・・・つかさは、どうなっても構わない。容赦なく相手をつぶせ」
「政宗様・・・、」
「俺は国主だ。人一人の為に多くの犠牲を生むわけには、行かない」
「・・・、かしこまりました。」
あんなに可愛がっていたというのに諦めるときは一瞬で終わるものなんだな。
小次郎を、弟を討ち取った時もそうだった。たとえ母の愛情を一心に受けていた存在でも弟だから俺自身も可愛く思えた。だというのに後継者争いで殺した時、何も思いやしなかった。
悲哀、憎悪、後悔。何もかもが浮かばずただ空虚が胸を占めていった。
その時と同じ感覚だ。
父の時も、そうだったか―――――――・・・
「―――つくづく俺は・・・」
化物みたいだな。
可愛く、愛しているはずなのにいざとなると本当は愛していないのだとわかる。
愛しているのならばこんな空虚な、何も感じないということはないのだ。
人間にとって必要なものが無い。
きっと。
――――・・・右目と共に捨てちまったのかもな。
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